判例時報 No.1968〔判例評論 No.582〕
平成19年8月1日 号 定価:円
(本体価格:円+10%税)
判例特報 ①一 会社員が少年グループに、監禁、拉致、リンチされて殺害された事案について、警察の捜査等に不手際があったとして、遺族の県に対する国家賠償請求が認められた事例 二 捜査上の過失と犯罪の結果との問の相当因果関係を […]
判例特報
①一 会社員が少年グループに、監禁、拉致、リンチされて殺害された事案について、警察の捜査等に不手際があったとして、遺族の県に対する国家賠償請求が認められた事例
二 捜査上の過失と犯罪の結果との問の相当因果関係を否定したが、当該過失がなければ三割程度の犯罪の結果回避可能性があったとして、この可能性の侵害による損害賠償が肯定された事例
――栃木リンチ殺人事件国家賠償訴訟控訴審判決(東京高判平19・3・28)
②中国残留孤児の帰国を制限する政府関係者の措置は違法であり、政府の帰国孤児に対する自立支援義務に僻怠があったとして、国の国家賠償責任が認められた事例――中国残留孤児兵庫訴訟第1審判決(神戸地裁平18・12・1)
行政
▽米国で起訴され、「日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約」二条一項に基づき米国から引渡しを求められ、審査の対象とされた者が身柄を拘禁されたものの、東京高裁によって逃亡犯罪人を引き渡すことができない場合に該当するとの決定がされた場合について、国の国家賠償責任が否定された事例
(東京地判平18・10・31)
民事
◎パチンコ業者らが風俗営業の許可に係る規制を利周して競業者において購入した出店予定地での営業許可を受けることができないようにする意図の下に近接する土地等を児童遊園として社会福祉法人に寄附した行為が不法行為を構成するとされた事例
(最三判平19・3・20)
○健康保険組合が、その被保険者の被扶養者で老人医療を受ける者が、病院で医療過誤により受傷し、そのため老人保健法に基づいて社会保険診療報酬基金に同組合が納付すべき医療費拠出金の額が増額したことを損害と主張し、加害病院に対し債務不履行ないし不法行為に基づく賠償請求をし請求が認められなかった事例
(東京高判平18・11・30)
〇一 記事が議員に対する疑惑を追及する体裁を採っている場合における名誉穀損におけ
る違法性の判断基準
二記事が、議員に対する疑惑を追及する体裁を採っている場合であっても、議員に係る特定の事実を提示し、併せてその事実の一部の真実性について疑わしい程度に留まるとの意見を付したもので、当該事実部分によって名誉が毀損されるとされた事例
(東京高判平17・5・31)
▽出席日数不足を主な理由として高等学校の生徒を留年させた私立高校設置者の措置が在学契約上の債務不履行に当たらないとされた事例
(東京地判平19・3・26)
▽精神病院に入院させるため町の職員等が被入院者を押さえつけ、医師が精神安定剤を注射し、町有車で病院に搬送した行為は違法であるとして、国家賠償請求及び医師に対する不法行為による損害賠償請求が認められた事例
(京都地判平18・11・22)
知的財産権
▽一 特許発明に係る装置の点検、修理及び部品を交換するだけの行為は、特許法二条三項三号にいう「使用」に該当しないとされた事例
二 後に特許権者となる者から後に当該特許発明に係ることとなる装置について適法に譲渡を受けた場合には、後に設定登録がされる当該特許権はその目的を達したものとして消尽するとされた事例
(大阪地判平18・7・20)
労働
▽使用者が新規採用者の初任給を引き下げたことが、労働組合との問の義務的団交事項に該当するか(消極)
(東京地判平18・12・18)
刑事
◎第一審の無罪判決に対し検察官が控訴を申し立て控訴審に係属中に所在不明となった被告人に対する公判期日召喚状等の付郵便送達が有効とされた事例(最三決平19・4・9)
最新判例批評
五六 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律二条一項に基づく認定を却下する処分が取り消された事例――原爆症認定大阪訴訟第一審判決(大阪地判平18・5・12)……佐伯祐二
五七 道路を管理する地方公共団体の占有権の有無と占有権に基づく妨害予防請求(最三判平18・2・21)……新井剛
五八 入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格を原則として男子孫に限定し同人会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分が民法九〇条の規定により無効とされた事例その他
(最二判平18・3・17)……吉田克己
五九 集合動産譲渡担保の競合および第三取得者に対する効力
(最一判平18・7・20)……武川幸嗣
六〇 ホームページに事実に反する内容が掲載されたため、東京国税局が同局ホームページ上で実名を挙げて当該記載中に事実に反する部分がある旨の注意文書を掲載・公表したことにつき、適切な職務行為であるとして名誉毀損、信用毀損による不法行為の成立が否定された事例
(東京地判平18・6・6) ……吉田和夫
六一 国家の裁判権免除に関する制限免除主義の採用(最二判平18・7・21)……小寺彰
六二 特許権等の通常実施権許諾権契約に含まれる最高製造販売数量制限条項に対する独占禁止法上の評価
(大阪地判平18・1・16)……泉克幸
六三 団体保険契約において生命保険相互会社の株式会社への組織変更に伴う割当て株式の売却代金を保険契約者である団体が取得したことが不当利得には当たらないとされた事例
(大阪高判平18・5・19)……遠山聡
六四 生コン事業におけるロックアウトの正当性――安威川生コンクリート工業事件
(最三判平18・4・18)……野川忍