判例時報 No.2532*
2022年11月21日 号 定価:850円
(本体価格:773円+10%税)
SBS/AHT仮説をめぐる日本と海外の議論状況……秋田真志
海外判例研究──第14回──
大林啓吾 胡 光輝
ダン ローゼン・西口 元
カライスコス アントニオス
小池信太郎 佐藤拓磨
■書評
三ヶ月章『流涕記』
評者 泉 徳治
■判例特報
山形大学不当労働行為救済命令取消請求事件
(最二判令4・3・18)
泉佐野市ふるさと納税事件
(大阪地判令4・3・10)
■判決録
<行政> 5件
<刑事> 2件
◆記 事◆
SBS/AHT仮説をめぐる日本と海外の議論状況……秋田真志
海外判例研究──第14回──
・憲法
ボストン市が希望者に対して市庁舎前の市旗掲揚ポールに旗の特別掲揚を認めていたところ、キリスト教の旗の掲揚の申込に対しては政教分離を理由としてこれを拒否したため、表現の自由を侵害するかどうかが争われた事例――シュルトレフ判決……大林啓吾
公益団体の理事会が理事に対して行った譴責が表現の自由を侵害すると主張することができるかが争われた事例――ヒューストン・コミュニティ・カレッジ判決……大林啓吾
・民法
違約金に関連する和解協議書の内容の履行をめぐる事件……胡 光輝
ハーグ条約13条1項⒝は、子の返還につき「重大な危険」(grave risk)がある場合には、裁判所に子の返還を命じない裁量権を与えているとして、子の返還を安全にする可能性があるあらゆる選択肢を検討すべきであるとした原審の判断が取り消された事例……ダン ローゼン・西口 元
・消費者法
消費者契約におけるオンラインプラットフォーム事業者の情報提供義務……カライスコス アントニオス
・刑法
少年同士の一対一の殴り合いによる傷害について、被害者の同意による正当化が認められた事例……小池信太郎
相場操縦罪における没収の範囲……佐藤拓磨
◆書 評◆
三ヶ月章『流涕記』
評者……泉 徳治
◆判例特報◆
◎使用者が誠実に団体交渉に応ずべき義務に違反する不当労働行為をした場合において、当該団体交渉に係る事項に関して合意の成立する見込みがないときに、労働委員会が使用者に対して誠実に団体交渉に応ずべき旨を命ずることを内容とする救済命令を発することの可否
──山形大学不当労働行為救済命令取消請求事件
(最二判令4・3・18)
▽1 地方交付税法15条2項に基づき総務大臣が行う特別交付税の額の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たり、その取消しを求めるにつき訴えの利益がある
2 ふるさと納税に係る寄附金の収入見込額が一定額を超えた場合を特別交付税の減額項目と定める「特別交付税に関する省令」(昭和51年自治省令第35号)附則5条21項(令和2年総務省令第111号による改正前のもの)及び同附則7条15項(令和2年総務省令第12号による改正前のもの)の規定は、地方交付税法15条1項の委任の範囲を逸脱し、無効である
──泉佐野市ふるさと納税事件
(大阪地判令4・3・10)
◆判決録細目◆
行 政
◎複数の不動産を一括して分割の対象とする共有物の分割により不動産を取得した場合における地方税法73条の7第2号の3括弧書きに規定する「当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分」の有無及び額の判断の方法
(最三判令4・3・22)
▽ひとり親障害者が障害基礎年金を受給したことを理由に、児童扶養手当の支給を停止された事案において、児童扶養手当法施行令(令和2年政令第318号による改正前のもの)6条の4のうち、障害基礎年金の子加算部分だけでなく本体部分についても併給調整の対象として児童扶養手当の支給を停止する旨を定めた部分は、①児童扶養手当法(令和2年法律第40号による改正前のもの)13条の2第2項の委任の範囲を逸脱するものではない、②憲法14条、25条、国際人権規約に違反して無効であるとはいえないとされた事例
(京都地判令3・4・16)
▽複合構造家屋の登録価格の決定が客観的には違法であっても、当該登録価格が合理性を否定し難い他の方法により是正されたときの価格を上回らない場合には、職務上の注意義務に違背して納税者に損害を加えたとはいえないとして、国家賠償責任が否定された事例
(東京地判令3・3・26)
▽県道で発生した自動車事故の原因が、道路の排水設備に落ち葉等が堆積したことにより生じた水たまりを走行したことにあるとして、落ち葉等を除去しなかったこと等につき、道路管理者である県に国家賠償法2条1項の責任を認めた事例
(神戸地判令3・8・24)
▽1 自治区の構成員らによる共同断交の決議やこれに沿った各言動が村八分として共同不法行為を構成するとされた事例
2 行政区の自治委員や自治区の区長が国家賠償法上の公務員や市の被用者に当たらず、自治会連合会も同法上の公共団体に当たらないとされた事例
(大分地中津支判令3・5・25)
刑 事
○被告人を無罪とした控訴審判決が最高裁判決により破棄され、その後の差戻控訴審が、強盗殺人罪の成立を否定して殺人罪と窃盗罪を認めた差戻前1審判決を破棄して1審に差し戻した事件につき、破棄判決の拘束力を一部認めて強盗殺人罪の成立を認定した1審判決に対する被告人からの控訴を棄却した事例
──米子ホテル強盗殺人第3次控訴審判決
(広島高松江支判令3・11・5)
▽看護師であった被告人が、勤務先の病院において、入院患者3名に消毒薬を投与して殺害した殺人事件等につき、被告人に完全責任能力を認めた上で、死刑を科することがやむを得ないとまではいえないとして、無期懲役刑を言い渡した事例
(横浜地判令3・11・9)
※訂正箇所
●本紙97頁 「海外判例研究 第14回」目次【民法】3行目
誤 …子の変換
正 …子の返還