判例時報 No.2529〔評論 No.764〕
2022年11月1日 号 定価:1470円
(本体価格:1336円+10%税)
<最新判例批評>
近江 美保 長島 光一 倉見 智亮
裁判制度のパラダイムシフト
─過去と未来をつなぐ憲法上の10のテーマ(9)
──違憲判断の「効力」と「拘束力」……笹田栄司
■判例特報
あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律19条1項と憲法22条1項
(最二判令4・2・7)
■判決録
<行政> 1件
<民事> 3件
<知的財産権> 1件
<商事> 1件
<刑事> 2件
◆記 事◆
裁判制度のパラダイムシフト
─過去と未来をつなぐ憲法上の10のテーマ(9)
──違憲判断の「効力」と「拘束力」……笹田栄司
◆判例特報◆
◎あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律19条1項と憲法22条1項
(最二判令4・2・7)
◆判決録細目◆
行 政
▽政党県議団に属する議員らが県から県議団を通じて交付を受けた政務活動費の一部を政務活動に該当しない選挙活動等に係る記事も混在した広報紙の作成・配布に係る経費に充てたとして、県議会事務局長に対して県議団に不当利得返還等を求めるように請求した住民訴訟が一部認容された事例
(神戸地判令3・4・22)
民 事
○地方公務員災害補償基金の支部審査会における参考人の陳述や参与の意見陳述についての審議記録は、民事訴訟法220条4号ニに定める「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」にあたらない
(仙台高決令3・5・31)
○納品先の生活協同組合連合会が3か年計画による約1万本のLED蛍光灯の導入計画を立てる旨の説明をして、3か年計画による導入についての価格見積りとして1本5700円の価格を提示させながら、同連合会が3か年計画を立てなかったのにその説明をせず、同じ価格で発注を続けた同連合会の子会社である注文者につき、信義則上の情報提供義務違反の過失が認められた事例
(仙台高判令3・3・25)
▽1 学校法人のハラスメント防止委員会が行った、大学教授による発言がハラスメントに当たり厳重注意とすることが相当である旨の決定について、同決定の取消請求の訴えの利益を否定した事例
2 前記決定による名誉感情侵害の不法行為の成立を否定した事例
(札幌地判令3・8・19)
知的財産権
▽「ぼてぢゅう」の文字を含む結合標章(暖簾を模した図案中、その上段に「総・ぼ・て」の3字を含む図案を、その下段に「ぼてぢゅう総本家」を、それぞれ配置したもの)が、「ぼてぢゅう」という商標に類似しないとされた事例
(東京地判令4・3・18)
商 事
○1 株主権の確認及び当該株主に対する株主総会の招集通知を欠いたことによる株主総会決議の不存在確認を認めた1審判決が、控訴審において維持された事例
2 前記株主総会における取締役解任決議が記載された株主総会議事録を作成し、解任登記をしたことが不法行為に当たるとされた事例
(大阪高判令3・7・30)
刑 事
◎数罪が科刑上一罪の関係にある場合において、各罪の主刑のうち重い刑種の刑のみを取り出して軽重を比較対照した際の重い罪及び軽い罪のいずれにも選択刑として罰金刑の定めがあり、軽い罪の罰金刑の多額の方が重い罪の罰金刑の多額よりも多いときの罰金刑の多額
(最一判令2・10・1)
○1 入場情報を機械として判定対象としていない自動改札機における、磁気定期券を用いたキセル乗車について、鉄道会社が設置する駅の自動改札システムの目的は、有効適切な区間の乗車券や磁気定期券による有効適切な乗車か否かを判断することにあり、同システムにおいて予定されている事務処理の目的とは、乗車駅と下車駅との間の正規の運賃が支払われた正当な乗車か否かを判定して出場の可否を決することを指すとして、電子計算機使用詐欺罪の成立を認めた事例
2 1審判決が、前記自動改札機が入場情報を判定対象としていないとの個別具体的な事務処理の内容を捨象し、自動改札システムの一般的な抽象的な目的を前提に判断するのは、電子計算機使用詐欺罪の外縁を不明確なものにし、処罰の範囲を不当に拡大するおそれがあるとしたのに対し、駅係員に前記キセル乗車に用いた定期券を示した場合には詐欺罪が成立することが明らかであるから、同自動改札機に同定期券を投入した行為を詐欺罪の補充規定である電子計算機使用詐欺罪で処罰することは、構成要件の外縁を不明確にするものでも処罰範囲を拡大するものでもないとした事例
(名古屋高判令2・11・5)
判例評論
31 最高裁大法廷夫婦同氏制合憲決定──夫婦同氏制と国際人権法
(最大決令3・6・23)……近江美保
32 1 被告国及び被告東電に対し、平成23年3月11日に発生した福島第一原発の事故により放射能に汚染された福島県双葉郡浪江町津島地区全域について、放射線量を低下させる義務のあることの確認を求める訴えが棄却され、放射線量を低下させることを求める訴えが却下された事例
2 経済産業大臣が、福島第一原発について平成18年までに発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令(昭和40年通商産業省令第62号)4条1項の基準を満たしていないことを理由とする技術基準適合命令を発しなかったことは、法の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、著しく合理性を欠くものであり、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとされた事例
3 被告東電に故意に匹敵するような重大な過失があったとは認められず、被告東電の悪質性を慰謝料の増額事由として考慮することはできないが、前記津島地区に居住する原告らが抱く被ばくの不安は、慰謝料の算定に当たって考慮すべきであるなどとして、被ばく慰謝料を請求している原告について基本額として1人1600万円を認めた事例
4 被告東電から基本額を超える額の支払いを受けた原告については、被告東電と当該原告との間で、個別事情を考慮して上乗せした賠償額を被告東電が支払う旨の合意が成立したと認めた事例
(福島地郡山支判令3・7・30)……長島光一
33 減額賦課決定により配当時に遡って存在しなかったこととなる年度分の個人住民税に充当されていた配当金を配当時に存在していた他の年度分の差押えに係る個人住民税に遡って充当すべきとされた事例
(最三判令3・6・22)……倉見智亮