判例時報 No.2520〔評論 No.761〕
2022年8月1日 号 定価:1470円
(本体価格:1336円+10%税)
<最新判例批評>
平 裕介 都築 満雄 松嶋 隆弘
濱口弘太郎 浦野由紀子
統治構造において司法権が果たすべき役割第3部(4)
裁判官の良心について……長谷部恭男
■判決録
<行政> 1件
<民事> 6件
<労働> 1件
<刑事> 1件
◆記 事◆
統治構造において司法権が果たすべき役割第3部(4)
裁判官の良心について……長谷部恭男
◆判決録細目◆
行 政
○令和3年10月の衆議院小選挙区選出議員選挙における選挙区割りを定める公職選挙法の規定の憲法適合性
(大阪高判令4・2・3)
民 事
◎財産の分与に関する処分の審判の申立てを却下する審判に対し相手方が即時抗告をすることの許否
(最一決令3・10・28)
○親族間の土地使用貸借において、借主の死亡による民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)599条に基づく使用貸借の終了が否定されたが、当事者の信頼関係破壊を理由に同法597条2項ただし書の類推適用により使用貸借の解約が認められた事例
(名古屋高判令2・1・16〈参考原審:名古屋地半田支判平31・3・26〉)
○交通事故により死亡した公務員の遺族が受領した死亡退職手当は、損益相殺として、被害者の退職手当逸失利益の当該遺族の相続分から控除されるが、退職手当逸失利益の当該相続分の額が死亡退職手当の額を下回る場合であっても、その差額を給与逸失利益等他の損害の費目から控除することは許されないとされた事例
(高松高判平30・1・25〈参考原審:高松地判平29・7・18〉)
▽大学の医学部入学試験において出願者の属性(女性、浪人生及び高等学校等コード51000以上の者)を不利に扱う得点調整は違法であり、同大学を運営する学校法人は入学試験の評価において属性を考慮する旨を告知する信義則上の義務を負うものとし、受験生の納入した入学検定料、受験票送料、送金手数料、出願書類郵送料、及び特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額について損害を認め、旅費及び宿泊費については支配性の要件を欠くとして請求を却下した事例
(東京地判令2・3・6)
▽店舗内の個室トイレに入室しようとした67歳の女性がトイレ内の段差に足を取られて転倒し傷害を負ったとして、同店舗の運営会社に対し損害賠償を求めた事案で、土地工作物責任(民法717条1項)が認められ、請求が一部認容された事例(過失相殺5割)
(横浜地判令4・1・18)
▽原告が主張する燃料電池ユニットを発生源とする低周波音による健康被害について、前記発生源から生じた低周波音により原告が健康被害を受けるようになり、同被害が継続している旨の具体的な立証がないとして請求を棄却した事例
(横浜地判令3・2・19)
労 働
○従業員による暴行により三叉神経痛・心的外傷後ストレス障害(PTSD)が発症した旨の労災認定がされた事案につき、その発症・因果関係に疑問があり、PTSD発症についての予見可能性も認められないとして、顔面殴打に関連する眼科初診治療費等に限り損害賠償を命じた事例
(大阪高判令2・11・13〈参考原審:大阪地判平30・12・14〉)
刑 事
○軽度知的障害を有する年少の養女に対する監護者性交等の事案において、捜査機関の関与前に児童相談所が実施していた被害者面接時の記録媒体を証拠採用し、その内容も踏まえた上で被害者証言の信用性を肯定して被告人を有罪とした差戻後第1審判決が控訴審において維持された事例
(福岡高判令3・10・29〈参考差戻前第1審:福岡地判令1・7・18、差戻前控訴審:福岡高判令2・3・11、差戻後第1審:福岡地判令3・6・9〉)
判例評論
19 違法行為の転換あるいは理由(法的根拠)の差替え
(最三判令3・3・2)……平 裕介
20 土地の売買契約の買主が売主に対し債務の履行を求めるための訴訟の提起等に係る弁護士報酬を債務不履行に基づく損害賠償として請求することができないとされた事例
(最三判令3・1・22)……都筑満雄
21 社債に対する利息制限法の適用の可否
(最三判令3・1・26)……松嶋隆弘
22 加害者が被害者を同乗させ被害者所有の自動車を運転中に起こした交通事故につき、加害者との間で自動車共済契約を締結していた共済事業者(原告)が被害者に対して損害賠償金を支払ったが、加害者と同居する加害者の父が他の共済事業者(被告)と自動車共済契約を締結していたときは、前記交通事故による損害については両共済契約の他車運転特約がそれぞれ適用されるから、両共済契約は保険法20条の重複保険に当たり、同条2項に基づき、原告は被告に対し、求償できるとした事例
(東京地判令2・6・22)……濱口弘太郎
23 自筆遺言証書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって同証書による遺言が無効となるものではないとされた事例
(最一判令3・1・18)……浦野由紀子