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判例時報 No.2494
             2021年11月11日 号 定価:850円 (本体価格:773円+10%税)

海外判例研究──第12回──
 大林 啓吾  胡 光輝
 カライスコス アントニオス
 ダン ローゼン・西口 元
 神馬 幸一  佐藤 拓磨
 
責任能力判断の責任論的・心理学的基礎と実践
【第1回】……清野憲一
 
■判決録
<行政> 1件
<民事> 2件
<労働> 3件
<経済> 1件
<刑事> 2件


◆記 事◆

海外判例研究──第12回──

・憲法
 生徒が学校外でSNSを使って学校や部活を冒涜する投稿をしたことに対し、学校が1年間部活動を停止する処分を行うことは表現の自由を侵害するとされた事例――マハノイ判決……大林啓吾

 カトリック社会事業団が宗教的信条に基づき同性カップルを養親として認めないことが差別に当たるとして児童養護施設の認定を行わないことは信教の自由を侵害するとされた事例――フルトン判決……大林啓吾

・民法
 区分所有建物の専有部分の用途変更をめぐる事件……胡 光輝

・消費者法
 オンライン・プラットフォーム上での違法なコンテンツ(著作権法違反)に関するプラットフォーム事業者の責任……カライスコス アントニオス

 「電話消費者保護法」(TCPA)が通話の使用を禁止する行為は、「自動電話ダイヤルシステム」を利用して保存(store)や作成(produce)をした電話番号に架電することであるとされた事例……ダン ローゼン・西口 元

・刑法

 「自殺関与(オーストリア刑法第78条)」の部分的違憲性……神馬幸一

 犯罪収益の拡大没収を言い渡した一事例……佐藤拓磨

責任能力判断の責任論的・心理学的基礎と実践【第1回】……清野憲一

◆判決録細目◆

行 政

○小学校の教員が脳幹部出血を発症して後遺障害が残ったことについて、当該発症と公務との間に相当因果関係が認められるとされた事例

(福岡高判令2・9・25〈参考原審:熊本地判令2・1・27〉)

民 事

◎1 有価証券届出書の財務計算に関する書類に係る部分に虚偽記載等がある場合に当該有価証券の募集に係る発行者等と元引受契約を締結した金融商品取引業者等が金融商品取引法21条1項4号の損害賠償責任につき同条2項3号による免責を受けるための要件
2 株式の上場に当たり提出された有価証券届出書のうち当該上場の最近事業年度及びその直前事業年度の財務諸表に虚偽記載があった場合において当該株式の発行者等と元引受契約を締結した金融商品取引業者の金融商品取引法21条1項4号の損害賠償責任につき同条2項3号による免責が否定された事例

(最三判令2・12・22)

▽地方公共団体である被告の設置運営する高校に在籍していた原告が、被告に対し、同高校の教員らから頭髪指導として頭髪を黒く染めるよう繰り返し強要され、高校に登校しなくなった後は生徒名簿から氏名を削除されるなどして精神的苦痛を被ったなどとしてした国家賠償請求等につき、染髪を禁じた校則及びこれに基づく頭髪指導は同高校及び教員らの裁量の範囲内で適法であるとする一方、生徒名簿からの氏名の削除等は教育環境を整える目的でされたものではなく、手段の選択も著しく相当性を欠くなどとして、原告の国家賠償請求を一部認めた事例

(大阪地判令3・2・16)

労 働

◎1 無期契約労働者に対しては夏期休暇及び冬期休暇を与える一方で有期契約労働者に対してはこれを与えないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例(①事件)
2 私傷病による病気休暇として無期契約労働者に対して有給休暇を与えるものとする一方で有期契約労働者に対して無給の休暇のみを与えるものとするという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例(②事件)
3 無期契約労働者に対して年末年始勤務手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例(③事件)
4 無期契約労働者に対して祝日を除く1月1日から同月3日までの期間の勤務に対する祝日給を支給する一方で有期契約労働者に対してこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例(③事件)
5 無期契約労働者に対して扶養手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例(③事件)

(①②③最一判令2・10・15)

経 済

▽パチンコ遊技機及びパチスロ遊技機の販売業者の事業者団体が、組合員である販売業者に対し、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則の改正により設置が許されなくなった遊技機を経過措置期間経過前に計画的に撤去するという同事業者団体を含む業界関係団体の立てた計画に従わないパチンコ・パチスロ遊技場の経営者に対して中古遊技機の設置に係る風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律上の行政手続に必要となる保証書作成等の業務をすることを拒絶するように求めた行為は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条9項1号の「供給を拒絶」する行為に該当するが、目的の正当性及び手段の相当性が認められるから、不公正な取引方法に該当しないとされた事例

(東京地決令3・3・30)

刑 事

○少年が、元同級生であった被害者に対し、メリケンサックを装着した右手拳で殴打して全治10日間を要する左側頭部挫創の傷害を負わせた傷害保護事件において、少年を保護観察に付することとした原決定につき、処分の著しい不当を理由とする抗告を棄却した事例

(東京高決令2・11・20)

▽自宅で宅配荷物を受領する際、配達票の受取印欄に仮名で署名した行為について、作成者と名義人の人格の同一性に齟齬をきたすものとはいえないから、署名偽造に当たらないとした事例

(京都地判令2・6・25)

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