判例時報 No.2471*
2021年4月11日 号 定価:850円
(本体価格:773円+10%税)
裁判制度のパラダイムシフト
─過去と未来をつなぐ憲法上の10のテーマ(4)
──最高裁判所の構造分析──
「二重の役割」を担う裁判所の宿命……笹田栄司
コロナ禍社会における法的諸問題(12)
コロナ禍社会における学校法務……鈴木勝利
■判決録
<行政> 1件
<民事> 4件
<労働> 1件
<刑事> 2件
◆記 事◆
裁判制度のパラダイムシフト
─過去と未来をつなぐ憲法上の10のテーマ(4)
──最高裁判所の構造分析──
「二重の役割」を担う裁判所の宿命……笹田栄司
コロナ禍社会における法的諸問題(12)
コロナ禍社会における学校法務……鈴木勝利
◆判決録細目◆
行 政
◎ふるさと納税制度に係る平成31年総務省告示第179号2条3号の規定のうち、地方税法37条の2及び314条の7を改正する平成31年法律第2号の規定の施行前における寄附金の募集及び受領について定める部分の法適合性
(最三判令2・6・30)
民 事
◎1 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合に、同逸失利益は定期金による賠償の対象となるか
2 交通事故に起因する後遺障害による逸失利益につき定期金による賠償を命ずるに当たり被害者の死亡時を定期金による賠償の終期とすることの要否
3 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合に、同逸失利益が定期金による賠償の対象となるとされた事例
(最一判令2・7・9)
○夫である相手方(原審申立人)が妻である抗告人(原審相手方)に対し、前件調停で合意された婚姻費用の分担額の減額を求めた事案において、相手方の収入の減少は、具体的に予見されていたものとはいえず、改めて婚姻費用の額を算定するのが相当であるとした上で、その算定の基礎とすべき相手方の収入は、退職月の翌月から離婚又は別居解消に至るまでの期間については、相手方が65歳で年金受給を開始していたとすれば受給できた年金収入を給与収入に換算した額及び配当収入を給与収入に換算した額を合算した額とするのが相当であるとして、原審判を一部変更した事例
(東京高決令1・12・19〈参考原審:東京家審令1・9・6〉)
○1 1審判決言渡期日の調書に言渡しを行った主体(裁判長)の記載がない場合に、控訴審において、適式な判決の言渡しはされなかったとして取消しを免れないとしつつ、原判決の判断を支持し、差し戻すことなく控訴を棄却した事例(①事件)
2 1審の審理中に裁判体を構成する裁判官の一部(2名)に交代があったにもかかわらず、口頭弁論調書に弁論の更新がされた旨の記載がされないまま、交代後の裁判体によって原判決が言い渡された場合に、控訴審において、「第1審の判決の手続が法律に違反したとき」に当たるとして、原判決を取り消して差し戻した事例(②事件)
(①福岡高判令2・5・29〈参考原審:福岡地判令1・10・17〉、
②高松高判令2・9・16〈参考原審:高知地判令2・3・24〉)
労 働
▽使用者が、性同一性障害の労働者(生物学的性別が男性、性自認が女性)に対し、化粧を施して業務に従事していることを理由に就労を拒否したことが、使用者の責めに帰すべき労務提供の不能にあたると判断された事例
(大阪地決令2・7・20)
刑 事
○1 被害者が6名に上る強盗殺人事件につき、外国人の被告人に完全責任能力を認めて死刑を言い渡した原判決を破棄し、被告人の心神耗弱を認めて無期懲役を言い渡した事例
2 被告人の犯行時の精神状態について、統合失調症による被害妄想を認めつつ犯行動機を金品取得目的に限定して完全責任能力を認めた原判決は、犯行当時の被告人の精神的な不穏状態が動機形成に及ぼした影響を十分に検討していない点で不合理であり、妄想及び精神的に不穏な状態が行動に及ぼした影響を考慮すれば、金品取得目的のほかに妄想上の追跡者から逃れる目的や妄想のゆえ被害者に誤った意味づけをした結果として犯行に及んだ可能性を否定できないとして、被告人に心神耗弱を認めた事例
(東京高判令1・12・5〈参考原審:さいたま地判平30・3・9本誌2416号98頁〉)
○特別養護老人ホームの入所者が間食として提供されたドーナツを摂取して窒息し、死亡したとされる事故について、事故当日、間食介助に加わり、ドーナツを配膳して提供した同施設の准看護師に業務上過失致死罪が成立しないとした事例
(東京高判令2・7・28〈参考原審:長野地松本支判平31・3・25〉)
※訂正箇所
●本誌2頁・中段・19~20行目、同74頁・4段・7~9行目
誤 …原判決の判断を支持し、差し戻すことなく控訴を棄却した事例
正 …原判決を取り消し、差し戻すことなく自判し控訴人の請求を棄却した事例