判例時報 No.2014〔判例評論 No.597〕
第2014号(平成20年11月1日) 号 定価:円
(本体価格:円+10%税)
◆判例特報◆ 諌早湾干拓事業により有明海の漁業環境が悪化したとし、漁民らの判決確定後三年までに五年間堤防の排水門の開門を継続することの請求が認められた事例 ――諌早湾干拓地潮受堤防撤去等請求事件第一審判決 (佐賀地判平2 […]
◆判例特報◆
諌早湾干拓事業により有明海の漁業環境が悪化したとし、漁民らの判決確定後三年までに五年間堤防の排水門の開門を継続することの請求が認められた事例
――諌早湾干拓地潮受堤防撤去等請求事件第一審判決 (佐賀地判平20・6・27)
◆判決録◆
行政
▽老齢加算の廃止等を内容とする生活保護基準の改定及びこれに基づいて給付を減額すること等を内容とする保護変更決定が、生活保護法五六条、八条二項及び九条並びに憲法二五条等に反するものではなく適法とされた事例
――生活保護老齢加算廃止訴訟第一審判決(東京地判平20・6・27)
民事
◎Yが投資資金名下にXから金員を編取した場合に、Ⅹからの不法行為に基づく損害賠償請求においてYが詐欺の手段として配当金名下にXに交付した金員の額を損益相殺等の対象としてXの損害額から控除することは、民法七〇八条の趣旨に反するものとして許されないとされた事例(最三判平20・6・26)
〇村の発注する公共工事の指名競争入札に長年指名を受けて継続的に参加していた建設業を特定年度以降全-指名せず入札に参加させなかった村の措置につき、三か年度分の指名回避は違法とはいえず、二か年度分の指名回避は違法であるとしても村長に故意・過失があるとは認められないとして、損害賠償請求が棄却された事例
(高松高判平20・5・29)
▽比較的軽微の追突事故により被害者が低髄液圧症候群を発症したとは認められないとされた事例
(東京地判平20・2・28)
▽一 第三者名義の定期預金債権についてされた質権設定行為が旧破産法七二条一号による否認の対象となるとされた事例
二 破産債権者を害する質権設定行為につき受益者においてその行為の当時破産債権者を害することを認識していたものと認められた事例
三 民事再生法二五二条二項の規定の施行日前に民事再生手続が開始されていた場合における否認権の消減時効の起算日
(東京地判平20・6・30)
▽ヘルペス脳炎の患者を診療した医師が十分な問診、鑑別診断をせずに精神疾患の患者と誤
診し、適切な治療を怠った過失があったとして、病院側の不法行為責任が認められた事例
(名古屋地判平19・4・26)
▽アルゼンチンで発生した日本人運転者の交通事故により日本人同乗者が死亡した事故について、アルゼンチン法が準拠法であるとし、同国の民法の規定により損害が算定された事例
(福岡地飯塚支判平20・3・14)
知的財産権
▽一 明細書の記載を考慮して、構成要件に規定する筒「状体の内側の筒状可とう体」という用語の意義について、筒状可とう体のすべての部分が筒状体の内側のみに位置するものに限定されるものではないと解釈して、被告製品が特許発明の技術的範囲に属するとされた事例
二 特許権侵害訴訟において、計算鑑定の結果を踏まえて、特許法一〇二条二項の規定により損害と推定すべき利益の額が認定された事例(東京地判平19・12・25)
商事
◎会社分割に伴いゴルフ場の事業を承継した会社が預託金会員制のゴルフクラブの名称を引
き続き使用している場合における上記会社の預託金返還義務の有無
(最三判平20・6・10)
刑事
◎犯罪捜査に当たった警察官が犯罪捜査規範一三条に基づき当該捜査状況等を記録した備忘録は、刑訴法三一六条の二六第一項の証拠開示命令の対象となり得るか二警察官が捜査の過程で作成し保管するメモが証拠開示命令の対象となるものか否かの判断を行うために、裁判所が検察官に対し同メモの提示を命ずることの可否(最三決平20・6・25)
◆最高裁判例要旨 (平成二〇年七・八月分)
最新判例批評
六九 訴訟上の救助の決定を受けた者の全部敗訴が確定し、かつ、その者に訴訟費用を全部負担させる旨の裁判が確定した場合において、裁判所が同決定を民訴法八四条の規定に従って取り消すことな-同決定を受けた者に対し猶予した費用の支払いを命じることの許否(最三決平19・21・4)……堤龍弥
七〇 前訴において、本訴損害賠償請求債権について時効消滅を理由に本訴請求が棄却され、これを自働債権とし反訴貸付金返還請求債権を受働債権とする相殺の抗弁が重複訴訟禁止を理由に却下され反訴請求が認容されたにもかかわらず、後訴において、右損害賠償請求債権を自働債権とし右貸付金返還請求債権を受働債権とする相殺の抗弁が前訴判決の既判力に抵触しないなどとして認められた事例
(東京地判平18・12・4)……小林学
七一 登録自動車を目的とする民法上の留置権による競売における民事執行法一八一条一項三号所定の「担保権の存在を証する確定判決」
(最二決平18・10・27)……斎藤和夫
七二 商法(平成一七年法律第八七号による改正前のもの)二六六条一項五号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間
(最二判平20・平18・2)……藤原俊雄
七三 銀行取締役の融資決定における善管注意義務違反が認められた事例(①最二判平20・1・28②最二判平20・1・28)……志谷匡史
七四 日本マクドナルド事件
(東京地判平20・1・8)……大内伸哉