判例時報 No.2097
平成23年2月11日 号 定価:円
(本体価格:円+10%税)
◆記事◆
虚偽記載等開示による株主のキャピタルロスと会社の損害賠償責任額について―会社の不法行為責任と金融商品取引法二一条の二に関する裁判上の問題……鬼頭季郎、内藤和道
現代型取引をめぐる裁判例(271)・・・・・・升田純
◆判決録◆
◎社団たる医療法人の定款に、出資した社員が退社時に受ける払戻し及び当該法人の解散時の残余財産分配はいずれも当該法人の一部の財産についてのみすることができる旨の定めがある場合において、当該法人の増資時における出資の引受けに係る贈与税の課税に関し、当該法人の財産全体を基礎として当該出資を評価することに合理性があるとされた事例
(最二判平22・7・16)
◎数社を介在させて順次発注された工事の最終の受注者XとⅩに対する発注者Yとの間におけるYが請負代金の支払を受けた後にXに対して請負代金を支払う旨の合意が、Xに対する請負代金の支払につき、Yが請負代金の支払を受けることを停止条件とする旨を定めたものとはいえず、Yが上記支払を受けた時点又はその見込みがなくなった時点で支払期限が到来する旨を定めたものと解された事例
(最一判平22・10・14)
○柔道部の夏期合宿に参加した県立高校の生徒が外傷性急性硬膜下血腫を発症した場合に、指導教諭の保護義務違反を認め、県に対する国家賠償請求が認容された事例
(東京高判平21・12・17 )
○私債権に優先する公債権に対する配当を受けた公債権庁が、当該配当金を私債権に優先しない公債権に充当した後、改めて私債権に優先する公債樺に基づき配当を受けることができるか(消極)
(大阪高判平21・10・30)
▽一 ファンドによる出資のために利用された特別目的会社につき、法人格の濫用又は形がい化が認められなかった事例
(東京地判平22・9・30)
▽従業員のうつ病発症については会社の安全配慮義務違反は認められるが、自殺との間には相当因果関係は認められないと判断された事例
(大阪地判平22・2・15)
▽一 国家賠償法三条一項、七条一項に基づき、被害者に対し賠償金を支払った費用負担者は、公務員個人に対し、同法二条二項を根拠として、求償権を行使できるとされた事例
(佐賀地判平22・7・16)
○特許法二九条二項の判断に際して、先行技術から出発して当該発明の特徴点に到達できる試みをしたであろうという推測が成り立つのみでは十分ではなく、当該発明の特徴点に到達するためにしたはずであるという程度の示唆等の存在しこいたことが必要であるとされた事例―-医療用器具事件判決
(知的財産高判平22・9・28)
○指定商品の表現及び商品区分を改める商標登録出願の補正が「要旨の変更」に当たらないとされた事例
(知的財産高判平22・5・12)
▽代表権のない会社の取締役が所管の事業につき必要な情報を収集、分析検討した上で、社長(代表取締役)に説明、報告しなかったことにより、社長の判断を誤らせ、会社が製品の製造を委託した結果、会社に損害を与えた場合について、取締役の善管注意義務違反が認められた事例
(東京地判平22・6・30)
◎財産的権利等を防衛するためにした暴行が刑法三六条一項にいう「やむを得ずにした行
為」に当たるとされた事例
(最一判平21・7・16)
◎妄想型統合失調症による幻覚妄想状態の中で幻聴、妄想等に基づいて行った行為が「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」二条二項の対象行為に該当するかどうかの判断方法
(最三決平20・6・18)
◎一 鑑定入院命令が発せられた後に鑑定入院の必要がなくなったことなどの事情と「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」七二条一項の鑑定入院命令取消し請求の理由
(最三決平21・8・7)
◆最高裁判例要旨(平成二二年二月分)