判例時報 No.2101
平成23年3月21日 号 定価:円
(本体価格:円+10%税)
◆記事◆
ペットをめぐる民事紛争と要件事実――いわゆる「ペット法」と、規範構造の視点から……河村浩
現代型取引をめぐる裁判例(274)……升田純
海外刑法だより(310)――スペインの陪審制度(下)……森下忠
◆判決録◆
◎自ら設置した加入者光ファイバ設備を用いて戸建て住宅向けの通信サービスを加入者に提供している第一種電気通信事業者が、他の電気通信事業者に対して上記設備を接続させて利用させる法令上の義務を負っていた場合において、自ら提供する上記サービスの加入者から利用の対価として徴収するユーザー料金の届出に当たっては、光ファイバ一芯を複数の加入者で共用する安価な方式を用いることを前提としながら、実際の加入者への上記サービスの提供に際しては光ファイバ一心を一人の加入者で専用する高価な方式を用いる一方で、その方式による上記設備への接続の対価として他の電気通信事業者から取得すべき接続料金については自らのユーザー料金を上回る金額の認可を受けてこれを提示し、自らのユーザー料金が当該接続料金を下回るようになるものとした行為が、独禁法二条五項にいう「他の事業者の事業活動を排除」する行為に該当するとされた事例
(最二判22・12・17)
○ウェブサイトの電子掲示板において名誉毀損、信用棄損に当たる投稿があるのに、これを速やかに削除しなかったサイトの運営管理者に対する不法行為に基づく損害賠償及び謝罪文掲載請求が否定された事例
(東京高判22・8・26)
○預託金会員制のゴルフクラブを組織しているゴルフ場の経営会社が所定の手続を履践して増額した年会費について増額を承諾していない会員が支払義務を負う場合
(大阪高判22・2・10)
○日本放送協会が受信者の妻と夫名義の放送受信契約を締結した場合における民法七六一条の適用の可否(積極)
(札幌高判22・11・5)
▽被告が外国においてした行為により原告の法益について損害が生じたとの客観的な事実関係の証明がない場合と当該外国の裁判所が言い渡した外国判決の我が国における効力
(東京地判22・4・15)
▽戦没者の妻に支給される特別給付金が消滅時効にかかり失権したことにつき、国及び地方自治体に受給権者に対する個別請求指導義務違反があるとして求めた国家賠償請求が棄却された事例
(大阪地判22・10・15)
▽食品加工の請負契約において加工品が生菌等に汚染されていた鞍痕が注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じたものではなく、かつ、除斥期間内に修補請求がされていたので損害賠償請求権も保存されていたとして、注文者の請負人に対する損害賠償請求が納品された加工品の四割に相当する得べかりし利益の支払を求める限度で一部認容された事例
(福岡地判21・12・25)
▽市立中学校の生徒が同級生からのいじめにより転校を余儀なくされた場合、学校設置者の安全配慮義務違反等の責任が否定された事例
(京都地判22・6・2)
○リサイクル樹脂による内層及び未使用の樹脂による外層により構成される合成樹脂製窓材(窓枠)に関する発明について、窓枠の内側、外側及び側面の「少なくとも一つ」において内層と外層が特定の比率を充たすことを特徴とする旨の特許請求の範囲の記載が、技術常識によれば明確であり、発明の詳細な説明も、当業者がその実施をすることができる程度に十分かつ明確に記載されているとされた事例
(知的財産高判22 ・8 ・9)
○法人等と業務に従事する者との間に雇用関係があり、法人等の業務計画や法人等が第三者との間で締結した契約等に従って、業務に従事する者が所定の職務を遂行している場合には、法人等の具体的な指示あるいは承諾がなくとも、業務に従事する者の職務の遂行上、当該著作物の作成が予定又は予期される限り、著作権法一五条一項にいう「法人等の発意」の要件を満たす
(知的財産高判22・8・4)
○フランチャイザーの二名の取締役に対する任務僻怠を理由とするフランチャイジーの損害賠償請求が、判示の事実関係の下においては、各自についてそれぞれ代表取締役の職務遂行に対する監視義務を怠った任務懈怠が認められるとして、一部認容された事例
(東京高判22・8・25)
○編集制作職に従事し、多発性嚢胞腎の基礎疾患を有していた労働者のくも膜下出血による死亡について業務起因性が否定された事例
(東京高判22・10・13)
◎他の者を搭乗させる意図を秘し、航空会社の搭乗業務を担当する係員に外国行きの自己に対する搭乗券の交付を請求してその交付を受けた行為が、詐欺罪に当たるとされた事例
(最一決22・7・29)