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判例時報 No.2102
             平成23年4月1日 号 定価:円 (本体価格:円+10%税)

 


◆判決録◆

行政

◎明石海峡航路北側の航路外で西に向かう甲船と東に向かう乙船が衝突した事故について、海技士である甲船の船長を戒告とした高等海難審判庁の裁決が適法であるとされた事例

(最三判22・1・30)

民事

◎構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の効力は、譲渡担保の目的である集合動産を構成するに至った動産が滅失した場合にその損害をてん補するために譲渡担保権設定者に対して支払われる損害保険金に係る請求権に及ぶか

(最一決22・l2・2)

○酒瓶の回転装置契約の債務不履行により画像処理装置契約が不履行となった場合、履行補助者の法理により、信義則上、後者の契約の債務不履行責任が認められた事例

(大阪高判21・12・25)

〇一 建築主事は、建築基準法(平成一四年法律第二二号による改正前のもの)六条一項にいう建築基準関係規定が直接定めていない事項について審査義務はなく、それらに記載された事項に関連して右規定の定める審査事項違反となるような重大な影響がもたらされるようなことが明らかな場合において、故意又は重大な過失によって看過したという特別な事情がない限り、国家賠償法一条一項の職務上の注意義務に反したとはいえない

二 耐震偽装のある鉄筋コンクリート造りの建築物の構造設計につき建築確認に当たった建築主事に職務上の注意義務違反がないとされた事例

三 ホテル経営目的の建物の建築主とビジネスホテル経営指導契約を締結したコンサルタント業者が当該建物の設計を受託した建築士による構造設計に耐震偽装のあることを看過したことにつき、建築主に対する信義則上の注意義務に違反したとして不法行為責任が認められた事例

――半田市のビジネスホテル耐震強度偽装損害賠償請求事件控訴審判決

(名古屋高判22・10・29)

○国営諌早湾干拓事業により設置された同干拓地潮受堤防の北部及び南部の各排水門を、防災上やむを得ない場合を除き、判決確定の日から三年を経過する日までに開放し、以後五年間開放を継続すべきものとされた事例――諌早湾干拓地潮受堤防撤去等請求事件控訴審判決

(福岡高判22・12・6)

▽一 債務者がその所有する唯一の不動産を新たに譲渡担保に供し借用した金員を既存の債務の弁済に充てた場合において、当該譲渡担保設定行為が詐害行為にあたるとされた事例

二 譲渡担保設定行為を詐害行為として取り消す場合に、取消しの範囲を不動産の価格から負担すべき抵当権等の被担保債権額を控除した限度に限られるとして、価格賠償

が命じられた事例

(東京地判22・6・25)

▽戦時中に旧陸軍の掘削した地下濠の崩壊・陥没により発生した土地.・建物の損傷につき、国に土地の工作物の保存上の塀庇があるとして、民法七一七条一項の工作物責任が認められた事例

(東京地立川支判22・11・29)

▽市立高校の体操部員が部活練習において、平行棒の「後方抱え込み二回宙返り下り」の試技中に着地に失敗し前頭部を床に強打し重症を負った事故につき、指導教諭に過失があるとして市の国家賠償責任が認められた事例

(大阪地判22・9・3)

知的財産権

〇一 発明者の認定がされた事例

二 Ⅹ社が就業規則等に基づき従業者Aから特許を受ける権利の譲渡を受けた本件発明につき、AがⅩ社退職後Y社に入社し、Y社に特許を受ける権利を譲渡してY社において特許出願した事案について、Y社は「背信的悪意者」に当たるとして、Ⅹ社からY社に対する、Ⅹ社が特許を受ける権利を有することの確認請求が認容された事例

(知的財産高判22・2・24)

○一 蒸気機関車を撮影した映像の著作権者に無断で当該映像を編集した放送番組を収録

したDVDを販売した会社に対する著作権及び著作者人格権侵害に基づく損害賠償請求訴訟において、著作権者に過失があるとまで認めることは困難であるとして、過失相殺(一割)を認めた原判決の判断が否定された事例

二 著作権法一一四条三項による損害を算定するに当たり、映像の複製権侵害は、実際に販売されたDVDの枚数のみならず、納品された枚数において生じているものであるとして、著作権者が受けるべき著作権料相当額につき、原判決を変更して、納品枚数について損害が算定された事例

――SLDVD事件控訴審判決

(知的財産高判22・11・10)

商亊

◎社債等振替法一二八条一項所定の振替株式についての会社法一七二条一項に基づく価格の決定の申立てを受けた会社が、裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において、申立人が株主であることを争った場合における、社債等振替法一五四条三項所定の通知の要否

(最三決22・12・7)

労働

▽人材派遣会社が待機社員にした解雇が、切迫した人員削減の必要性が認められず、解雇回避努力を尽くしたと言い難い上、対象者の人選にも合理性がないとして無効とされた事例

(横浜地判23・1・25)

刑事

◎保釈された者が実刑判決を受けた後、逃亡等を行ったが判決確定前にそれが解消された場合に刑訴法九六条三項により保釈保証金を没取することができるか(最二決22・12・20)

◆最高裁判例要旨(平成二三年一月分)

判例評論

一七 墓地経営許可処分の取消訴訟において、墓地からおおむね一〇〇メートルの範囲内に居住し又は住宅を有する者の原告適格を認めたが、同処分は適法であるとして取消請求及び国家賠償請求を棄却した例(東京地判22・4・16) ……白藤博行

一八 固定資産の価格を過大に決定されたことによって損害を被った納税者が地方税法四三二条一項本文に基づく審査の申出及び同法四三四条一項に基づく取消訴訟等の手続を経ていない場合における国家賠償請求の許否(最一判22・6・3) ……村上裕章

一九 観音像の仏頭部のすげ替え行為が、著作者の死亡後の人格的利益の侵害に当たるとし、著作権法二五条の「名誉若しくは声望を回復するために適当な措置」等として、事実経緯を記載した広告文を新聞に掲載することが認められた事例

――駒込大観音事件(知的財産高判22・3・25)……横山久芳

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