判例時報 No.2116
平成23年8月21日 号 定価:円
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◆記事◆
最高裁民事破棄判決等の実情(中)―平成二二年度……田中秀幸 倉地康弘
現代型取引をめぐる裁判例(284)……升田 純
海外刑法だより(315)
国際自由権規約一四条三項……森下忠
◆判決録◆
〇 一 町の発注した公共工事について受注業者の談合があり、町長が談合を幇助していたとして受注業者と町長の損害賠償責任が認められた事例
―旧小淵沢町公共工事談合住民訴訟控訴審判決
◎契約の一方当事者が契約の締結に先立ち信義則上の説明義務に違反して契約の締結に関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合の債務不履行責任の有無(最二判23・4・22)
◎信用協同組合が自らの経営破綻の危険を説明すべき義務に違反して出資の勧誘をしたことを理由とする出資者の信用協同組合に対する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効が、遅くとも同種の集団訴訟が提起された時点から進行するとされた事例(最二判23・4・22)
○民間の調停によっては紛争が解決されないときに裁判所における法的手段を開始する旨の合意がある場合において、当該民間の調停の手続を経ずに提起された訴訟が、訴訟要件に欠けるものではないとされた事例(東京高判23・6・22)
○日本野球機構及び一二球団が私設応援団員に対してした入場券の販売拒否対象者の指定が無効・違法であるとして当該指定の無効確認請求及び被指定者の損害賠償請求を認容した第一審判決が控訴審において取り消されて無効確認請求に係る訴えが却下され、損害賠償請求が棄却された事例(名古屋高判23・2・17)
▽八一歳の独居年金生活者に対する投資信託の購入の勧誘につき、説明義務違反の責任が認められた事例(東京地判23・2・28)
▽再生債務者がした抵当権設定行為について無償行為否認が認められた事例(東京地判23・3・1)
▽肝硬変の治療に当たり、生体肝移植について説明すべき義務の違反があるとされた事例(大阪地判22・9・29)
○冒認出願(特許法一二三条一項六号)を理由として特許を無効とした審決が維持された事例(知的財産高判22・11・30)
○工業所有権に関する手続の代理又は鑑定等を指定役務とし、「みずほ」を平仮名書きした登録商標は、密接な関連性を有する役務について「MIZUHO」「みずほ」なる著名な引用商標を使用している被告及び被告グループの業務に係る役務と、広義の混同を生ずるおそれがある商標である(知的財産高判23・3・3)
▽分譲マンション内の排水管の漏水があり、カビの発生等の損害が区分所有者に生じ、保険金が支払われた事故について、漏水とカビの発生等との間の因果関係がないとして保険会社の管理組合に対する損害賠償請求が否定された事例(東京地判23・4・25)
▽一 会社の部長職にあった従業員が取引先の若い女性従業員に対するわいせつ行為を理
由に懲戒解雇処分を受けたことについて、解雇事由を認定し懲戒解雇処分が有効とされた事例(本訴)
二 当該従業員がわいせつ行為の存在を否定して会社に対して起こした本訴は濫訴であり不法行為にあたるとして、会社が応訴及び反訴に要した費用の一部につき損害賠償請求が認められた事例(反訴)
(東京地判22 ・12 ・27)