判例時報 No.2121
平成23年10月11日 号 定価:円
(本体価格:円+10%税)
◆記事◆
許可抗告事件の実情――平成二二年度……綿引万里子 今福正己
現代型取引をめぐる裁判例(287)……升田純
◆ 判例特報◆
証券取引法(平成一八年法律第六五号による改正前のもの) 一六七条二項にいう「公開買付け等を行うことについての決定」の意義(最一決23・6・6)
◆判決録◆
◎公にされている処分基準の適用関係を示さずにされた建築士法(平成一八年法律第九二号による改正前のもの)一〇条一項二号及び三号に基づくl級建築士免許取消処分が、行政手続法一四条一項本文の定める理由提示の要件を欠き、違法であるとされた事例(最三判23・6・7)
○貸金業者が交付したリボルビング方式による貸付けに係る契約書面の記載が貸金業法一七条所定の要件を具備するものでなかった場合において債務者から利息制限法所定の制限超過部分の支払を受けた貸金業者について悪意の受益者と推定するのを妨げる特段の事情があるとした第一審判決を取り消して悪意の受益者と推定された事例(東京高判23・3・24)
○受託者が委託者の顧客に対して継続的にLPガスを供給する旨のLPガス配送委託契約が合意解除された後、受託者が委託者の顧客に対して自らの営業活動を行ったことが、同契約に基づく守秘義務及び競業避止義務並びに信義則上の競業避止義務に違反する債務不履行にも、違法な勧誘行為により委託者の顧客を奪った不法行為にも当たらないとされた事例(知的財産高判23・6・30)
〇交通事故の被害者について、脳脊髄液減少症の発症が認められた事例(名古屋高判23・3・18)
▽一 医療法人の業務委託契約の締結及び業務委託料の支払について医療法人理事長、監事、業務委託先会社及び業務委託先会社代表者の共同不法行為が成立するとして、医療法人の共同不法行為者に対する適正な業務委託料を超える支出分についての共同不法行為に基づ-損害賠償請求が認容された事例
二 医療法人の業務委託契約の締結及び業務委託料の支払について医療法人理事長及び
監事の善管注意義務違反の債務不履行が成立するとして、医療法人の理事長及び監事に対する適正な業務委託料を超える支出分についての債務不履行に基づく損害賠償請求が不法行為に基づく損害賠償請求と共に認容された事例
三 医療法人の締結した業務委託契約が理事長の利益相反取引に当たり無権代理により無効であるとして、医療法人の業務委託先会社に対する適正な業務委託料を超える支出分についての不当利得返還請求が不法行為に基づく損害賠償請求と共に認容された事例
四 医療法人の資産の廉価売買について理事長と買主の共同不法行為が成立するとして、共同不法行為者に対する時価と売却価格との差額相当額の損害賠償請求が認められた事例
▽預けられていた登録刀剣の売買につき、即時取得の成立が否定された事例(東京地判23・3・17)
▽建設業者二社からなる共同企業体が請負工事を施工し、損失が発生した場合において、企業体の代表者である建設業者が他の建設業者に損失の負担を求めることが信義則に反するとされた事例(東京地判22・12・22)
▽建設機械の売主の信義則上の改修義務は、機械の耐用年数の経過等の事情により消滅したと認められた事例(大阪地判22・11・29)
▽建物を購入してから長期間居住した後に建物が接遺義務を満たしていないため建替えができないことを理由とする買主の売主及び仲介業者に対する説明義務違反を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求が認容された事例(千葉地判23・2・17)
▽固定資産を評価するに当たり担当職員に評価の誤りがあり’市に損害賠償責任があるとしたが、更正処分及び還付により損害は治癒されているとして、国家賠償請求が棄却された事例(奈良地葛城支判23・5・10)
○特許を受ける権利の共有者らから委任を受けた特許管理人が、共有者らのうちの1部の者のみを請求人として記載した審判請求書を提出して行った拒絶査定不服審判請求が、共有者全員のために行ったものであると認められるとされた事例(知的財産高判23・5・30)
○指定商品を「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」とする「黒糖ドーナツ棒」との文字を手書き風の文字で二列に縦書きしてなる登録商標(本件商標)につき、本件商標と外観において同一と見られる標章を付した包装が指定商品とされる商品に使用されており、その使用開始時期、使用期間、使用態様、当該商品の数量又は売上高等及び当該商品又はこれに類似した商品に関する本件商標に類似した他の標章の存否などの事情を総合考慮するとき、本件商標は、使用をされた結果、登録審決時点において、需要者が商標権者の業務に係る商品であることを認識することができるものになっていると認められた事例(知的財産高判23・3・24)
○被保険者がうたた寝から覚めて起きざまにアルコールを摂取するか摂取しようとしたことがきっかけとなり、うたた寝前に摂取していたアルコールの影響とうたた寝前に服用していた向精神薬の副作用とが相まって、嘔吐、誤嚥、気道閉塞となって窒息死するに至った
場合において、普通傷害保険約款にいう「外来の事故」とは認められないとして、これと異なる第一審判決が取り消され、被保険者の法定相続人の保険金請求が棄却された事例(大阪高判23・2・23)
○一 いわゆる「内々定」の取消しが内々定により成立した労働契約を一方的に解約するものであって違法であるとして損害賠償を求めた請求が棄却された事例
二 いわゆる「内々定」の取消しが期待権侵害ないし信義則違反による不法行為を構成するとして損害賠償を求めた請求が一部認容された事例