判例時報 No.2375・2376(秋季合併号)
平成30年9月11・21日 号 定価:1691円
(本体価格:1537円+10%税)
統治構造において司法権が果たすべき役割(3)
司法権と違憲審査権──客観訴訟の審査対象……渋谷秀樹
◎新連載
成年後見制度と意思決定サポートシステム(1)
問題の所在──高齢社会と地域生活支援……小賀野晶一
■判例特報
東京電力福島第一原発京都訴訟第一審判決
(京都地判平30・3・15)
■特集
二〇一一福島第一原発事故訴訟(第一審)の記録と論攷
①原発事故賠償訴訟の動向と論点
──国の責任について……下山憲治
②福島原発事故による「ふるさとの喪失」をどう償うべきか
──司法に問われる役割……除本理史
③国の責任を否定し、「ふるさと喪失慰謝料」を認めた
千葉判決の特徴……福武公子
④福島原発事故賠償訴訟における「損害論」
──集団訴訟七判決の比較検討……吉村良一
■判決録
<行政> 3件
<民事> 2件
<刑事> 1件
◆記 事◆
統治構造において司法権が果たすべき役割(3)
司法権と違憲審査権──客観訴訟の審査対象……渋谷秀樹
成年後見制度と意思決定サポートシステム(1)
問題の所在──高齢社会と地域生活支援……小賀野晶一
◆判例特報◆
一 福島第一原発事故により福島県、茨城県、栃木県及び千葉県から避難した者らの電力会社に対する原子力損害の賠償に関する法律三条一項に基づく損害賠償請求を全部又は一部認めた事例
二 福島第一原発事故において、電力会社及び国が、回避措置を取り得る程度に具体的な危険である福島第一原発の敷地高を超える津波の到来について予見可能性を肯定した事例
三 電力会社は、原子力損害の賠償に関する法律上の責任は負うが、同法の趣旨から、民法七〇九条の適用は排除されているため、同条の責任を負わず、また、電力会社に重過失までは認められないから、慰謝料の増額事由はないとした事例
四 経済産業大臣が、電気事業法又は核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に基づく規制権限を行使しなかったことが国家賠償法上違法であり、国の同法一条一項に基づく責任を肯定した事例
五 電力会社及び国は、それぞれ損害全額について責任を負うとした事例
六 福島第一原発事故と相当因果関係のある避難かどうかにつき、空間線量が政府による避難指示の基準である年間二〇mSv以下であっても、個々の属性や置かれた状況によっては社会通念上相当である場合はあり得るとし、居住区域によって判断基準や考慮要素を設定し、避難時期、福島第一原発との距離、周囲の住民の避難状況、避難者自身が放射線の影響を懸念しなければならない特別の事情があるかどうか等を踏まえて、個別具体的に避難の相当性を判断した事例
七 いわゆる自主的避難であっても、避難後一定期間内(おおむね二年間)に生じた損害は相当因果関係があると認めた事例
八 直接請求やADR手続で用いられている基準等や、同手続で認められた損害と訴訟で認定される損害との関係、及びADR手続等による既払金の充当について論じた事例
―東京電力福島第一原発京都訴訟第一審判決(京都地判平30・3・15)
◆特 集◆
二〇一一福島第一原発事故訴訟(第一審)の記録と論攷
①原発事故賠償訴訟の動向と論点
──国の責任について……下山憲治
②福島原発事故による「ふるさとの喪失」をどう償うべきか
──司法に問われる役割……除本理史
③国の責任を否定し、「ふるさと喪失慰謝料」を認めた千葉判決の特徴……福武公子
④福島原発事故賠償訴訟における「損害論」
──集団訴訟七判決の比較検討……吉村良一
◆判決録細目◆
行 政
◎村議会の議員である者につき地方自治法九二条の二の規定に該当する旨の決定がされ、その補欠選挙が行われた場合において、右の者が右決定の取消判決を得ても右議員の地位を回復することはできないとされた事例
(最三決平29・12・19)
○ドメスティック・バイオレンスの加害者とされる者の代理人弁護士から、住民基本台帳法に基づき、その被害者とされる者に係る戸籍の附票の写しが必要である旨の申出がされた場合に、住民基本台帳事務処理要領が定めるところに従って当該戸籍の附票の写しを交付しないとした市長の処分に裁量権の逸脱・濫用の違法はないとされた事例
(大阪高判平30・1・26〈参考原審:和歌山地判平29・6・30掲載〉)
▽一 農業委員会の会長を解任した総会決議の効力に係る紛争が法律上の争訟に当たるとされた事例
二 農業委員会の会長を解任した総会決議について、農業委員会等に関する法律(平成二七年法律第六三号による改正前のもの)五条七項の「所掌事務を行うにつき不適当と認めるとき」に当たるとした判断に裁量権の逸脱又は濫用の違法がないとされた事例
(千葉地判平29・12・19)
民 事
○国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律二八条一項四号及び五号の返還拒否事由の主張を排斥し、子の常居所地国(アメリカ合衆国)への返還を命じた事例
(東京高決平27・3・31〈参考原審:東京家決平27・2・27掲載〉)
○相手方による不法な留置の開始が、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の施行後であると認定した上、同法二八条一項三号の返還拒否事由の主張等を排斥して、子の常居所地国への返還を命じた事例
(大阪高決平27・8・17〈参考原審:大阪家決平27・5・22掲載〉)
刑 事
○救護義務違反・報告義務違反が成立するためには、交通事故を起こした運転者が、事故発生を認識した後、再発進して走行するなど、それらの義務の履行と相容れない行動をとっただけでは足りず、一定の時間的場所的離隔を生じさせて、それらの義務の履行と相容れない状態にまで至ったことを要するとされた事例
(東京高判平29・4・12〈参考原審:横浜地判平28・6・9掲載〉)