判例時報 No.2369
平成30年7月11日 号 定価:845円
(本体価格:768円+10%税)
◎新連載
統治構造において司法権が果たすべき役割(1)
──違憲審査活性化の複眼的検討……笹田栄司
企業間ビジネス紛争及び会社組織等紛争に関する裁判の運営上の諸問題
──企業法務の訴訟弁護士及び裁判官のために(3)……鬼頭季郎
■判例特報
川崎市過労交通事故死訴訟和解勧告決定
(横浜地川崎支決平30・2・8)
■判決録
<民事> 2件
<商事> 1件
<労働> 1件
<刑事> 2件
◆最高裁判例要旨(平成三〇年三月分)
◆記 事◆
統治構造において司法権が果たすべき役割(1)
──違憲審査活性化の複眼的検討……笹田栄司
企業間ビジネス紛争及び会社組織等紛争に関する裁判の運営上の諸問題
──企業法務の訴訟弁護士及び裁判官のために(3)……鬼頭季郎
◆判例特報
一 従業員が、不規則で過重な業務に従事し、夜通しの業務を終えて被告会社の指示・容認する通勤方法の原付バイクを運転して帰宅中に電柱に激突して死亡した事故について、右業務による疲労の過度の蓄積と顕著な睡眠不足に起因して居眠り状態となり生じたと認め、安全配慮義務違反の責任を肯定した事例
二 労災事故における過失相殺の規定の適用ないし類推適用の判断の在り方について、労使の指揮命令関係を考慮した詳細な説示をした上で、公共交通機関を利用せず原付バイクを運転した過失を一割に限定した事例
三 過労死等防止対策推進法一条の「過労死」の定義には該当しない「過労事故死」という労災の類型について安全配慮義務違反を認める裁判所の判断の先例としての意義は大きく、和解する場合でもその公表を求めるという遺族である原告らの希望とその意義から、民訴法八九条の和解勧試の決定の法形式の理由中で裁判所の判断の概要と「過労死」を巡る社会情勢下における当事者双方の和解の意義が詳しく説示され、和解内容及び決定の公表の相互の同意を含む和解条項による和解勧告が口頭弁論期日でなされて成立した事例
──川崎市過労交通事故死訴訟和解勧告決定(横浜地川崎支決平30・2・8)
◆判決録細目◆
民 事
▽契約書に訴訟についてのみ管轄合意がある場合、調停についての管轄合意があるとはいえないとされた事例
(大阪地決平29・9・29)
▽新聞の朝鮮人労働者の強制連行に係る掲載記事が虚偽だったとしても、それによって国民の知る権利がおびやかされたとはいえないとされた事例
(甲府地判平29・11・7)
商 事
○証券会社の営業員から取引会社に係る重要な事実の伝達を受けながら、その公表前に自己の計算で当該取引会社の株式を売り付けたとして、金融商品取引法(平成二三年法律第四九号による改正前のもの)一七五条一項一号、一六六条三項に基づき課徴金納付の命令を受けたものの、命令に該当する事実はなかったとして、右課徴金納付命令が取り消された事例
(東京高判平29・6・29〈参考原審:東京地判平28・9・1掲載〉)
労 働
○私立小学校の教頭が、運営主体である学校法人の理事長及び理事の横領・背任を告発する書面を県に提出したこと等を理由とする、同教頭に対する普通解雇が有効とされた事例
(東京高判平28・12・7〈参考原審:千葉地木更津支判平28・4・25掲載〉)
刑 事
◎被告人に訴訟能力がないために公判手続が停止された後訴訟能力の回復の見込みがないと判断される場合と公訴棄却の可否
(最一判平28・12・19)
○心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律は、憲法一四条一項、二二条一項及び三一条に違反しないとされた事例
(東京高決平29・7・14)
◆最高裁判例要旨(平成三〇年三月分)