判例時報 No.2363
平成30年5月11日 号 定価:845円
(本体価格:768円+10%税)
憲法訴訟の実践と理論(12)
──安保法制違憲国賠訴訟における抽象と具体の交錯──……棟居快行
■判決録
<行政> 1件
<民事> 2件
<知的財産権> 2件
<労働> 1件
<刑事> 3件
◆最高裁判例要旨(平成三〇年一月分)
◆記 事◆
憲法訴訟の実践と理論(12)
──安保法制違憲国賠訴訟における抽象と具体の交錯──……棟居快行
◆判決録細目◆
行 政
▽無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律五条一項に基づき公安調査庁長官の観察に付する処分を受けた団体が複数の集団に分派又は分裂した場合において、これらの集団を一つの団体としてされた右処分の期間を更新する旨の決定が違法であるとされた事例
(東京地判平29・9・25)
民 事
○市の設置管理する公園に関する使用許可申請に対する不許可決定は違法であるとして、市の国家賠償責任が認められた事例
(大阪高判平29・7・14〈参考原審:大阪地堺支判平28・11・15掲載〉)
▽裁判所法(平成一六年法律第一六三号による改正前のもの)の改正による司法修習生の給費制の廃止は、憲法に違反するものではないとして、原告の、改正前の裁判所法に基づく未払給与の支払請求及び国家賠償法一条一項に基づく損害賠償請求をいずれも棄却した事例
(大分地判平29・9・29)
知的財産権
〇「摩擦熱変色性筆記具及びそれを用いた摩擦熱変色セット」という名称の本件発明につき、当業者において、引用発明一に引用発明二を組み合わせる動機付けを欠き、仮に組み合わせることを容易に想到し得たとしても、それのみでは相違点五に係る本件発明の構成に至らず、さらに引用例三等記載の構成の適用を動機付けられたとしても、そのように、引用発明一に基づき、二つの段階を経て相違点五に係る本件発明一の構成に至ることは、格別な努力を要するものであるとして、容易想到性を否定した事例
(知財高判平29・3・21)
〇一 特許法一八四条の四第四項所定の「正当な理由」があるときとは、特段の事情のない限り、国際特許出願を行う出願人(代理人を含む)として、相当な注意を尽くしていたにもかかわらず、客観的にみて国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出することができなかったときをいう
二 出願人が国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出することができなかったことについて、特許法一八四条の四第四項所定の「正当な理由」があるということはできないとされた事例
(知財高判平29・3・7〈参考原審:東京地判平28・9・9掲載〉)
労 働
▽学校法人が設置・運営する大学における勤務延長教員の年俸額を減額する給与支給内規の変更について、合理性を否定し内規変更は全体として無効であるとした事例
(札幌地判平29・3・30)
刑 事
○一 コンピュータグラフィックス(CG)の素材となった写真の被写体である児童と全く同一の姿態、ポーズをとらなくても、当該児童を描写したといえる程度に、被写体とそれを基に描いたCG画像等が同一であると認められる場合には、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成二六年法律第七九号による改正前のもの)二条三項の「児童の姿態」に該当するとした事例
二 児童ポルノ製造罪の成立には、被写体の児童が、児童ポルノ製造の時点及び児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律施行の時点において一八歳未満であることを要しないとした事例
(東京高判平29・1・24〈原審:東京地判平28・3・15本誌2335号105頁掲載〉)
○一 被害者が「だまされたふり作戦」に協力して模擬現金を発送した後に犯行に加担した「受け子」に関し、詐欺未遂罪の成否につき不能犯と同様の判断方法を用いることを肯定し、共犯者との間で詐欺の共謀をしたと認められれば詐欺未遂罪の共同正犯が成立するとした事例(①事件)
二 ①事件と同様の「受け子」について、いわゆる承継的共同正犯としての詐欺罪の成立を肯定し、未遂犯として処罰すべき法益侵害の危険性の有無の判断につき、当該行為時点でその場に置かれた一般人が認識し得た事情と行為者が特に認識していた事情とを基礎とすべきであるとしてこれを肯定し、詐欺未遂罪の共同正犯が成立するとした事例(②事件)
(①名古屋高判平28・9・21〈参考原審:名古屋地判平28・3・23掲載〉、②福岡高判平29・5・31〈参考原審:福岡地判平28・9・12掲載〉)
◆最高裁判例要旨(平成三〇年一月分)