判例時報 No.2343
平成29年11月1日 号 定価:1466円
(本体価格:1333円+10%税)
<最新判例批評>
中村英樹 岩﨑政明 今川嘉文
最高裁民事破棄判決等の実情(下)
──平成二八年度──……野村武範・衣斐瑞穂
海外判例研究──第4回──
大林啓吾 胡 光輝 小池信太郎 佐藤拓磨 緑 大輔
岐路に立つ裁判官(7)
──大崎事件第三次再審請求 再審開始決定──……鴨志田祐美
刑法判例と実務
──第二三回 共犯の因果性(上)──……小林憲太郎
■判例特報
大崎事件再審開始決定(鹿児島地決平29・6・28)
■判決録
<行政> 2件
<民事> 2件
<知的財産権> 1件
<刑事> 3件
◆記 事◆
最高裁民事破棄判決等の実情(下)
──平成二八年度──……野村武範・衣斐瑞穂
海外判例研究──第4回──
・憲法
クレジットカードによる支払いに対して課金することを禁止する州法が表現の自由を制約するとした事例
未成年者も参加している商業的SNSに性犯罪登録者がアクセスすることを禁止した州法が表現の自由を侵害するとした事例……大林啓吾
・民法
違法代理懐胎で生まれた子の監護権をめぐる事件……胡 光輝
・刑法
自招酩酊による限定責任能力と刑の(裁量的)減軽……小池信太郎
危険犯における犯罪地……佐藤拓磨
・刑事訴訟法
アルゴリズムにより再犯可能性を予測するシステムの判断結果を考慮して裁判所が量刑判断を行うことが、適正手続保障に反しないとされた事例……緑 大輔
岐路に立つ裁判官(7)
──大崎事件第三次再審請求 再審開始決定──……鴨志田祐美
刑法判例と実務
──第二三回 共犯の因果性(上)──……小林憲太郎
◆判例特報◆
一 殺人、死体遺棄事件の第一審判決(懲役一〇年)が確定した請求人からの再審請求が認められた事例
二 新証拠である鑑定書によって死因を頸部圧迫による窒息死と推定した旧証拠の鑑定書の証明力が減殺され、かつ、新証拠である供述心理鑑定によって目撃者の目撃供述には体験記憶に基づかない情報が含まれている可能性が高く、その信用性評価には慎重な判断を要することが明らかになり、目撃供述によって補強されていた共犯者らの自白の証明力も減殺されたとした上で、新証拠と第二次再審請求までの旧証拠を総合して検討し、共犯者らの自白の信用性を否定し、新証拠が原審の審理中に提出されていたならば、有罪と認定するには、合理的な疑いが生ずるとして、再審開始が決定された事例
──大崎事件再審開始決定──(鹿児島地裁平29・6・28決定)
◆判決録細目◆
行 政
▽情報公開条例に基づき公開請求された文書に係る情報のうち、訴訟事件の事件番号を非開示とした部分についての取消しを認めなかった事例
(東京地判平28・11・29)
▽市立記念館条例を廃止する条例の制定行為について、処分性を否定した事例
(青森地判平29・1・27)
民 事
○営業許可を取り消す等の処分の違法を理由とする損害賠償請求権について、営業許可処分の取消訴訟の結果をまたずに処分の日を消滅時効の起算点とした事例
(東京高判平28・9・5)
▽不動産の所有権移転登記申請にあたり、売主の本人確認情報を提供した弁護士が、本人確認義務を怠り、成りすましを看過したことに過失があるとされた事例(過失相殺四割)
(東京地判平28・11・29)
知的財産権
◎一 商標法四条一項一〇号該当を理由とする無効審判が請求されないまま商標権の設定登録の日から五年を経過した後に、商標権侵害訴訟の相手方が、同号該当による無効理由の存在をもって、同法三九条において準用する特許法一〇四条の三第一項の規定に係る抗弁を主張することの許否
二 商標法四条一項一〇号該当を理由とする無効審判が請求されないまま商標権の設定登録の日から五年を経過した後に、商標権侵害訴訟の相手方が、その登録商標が自己の業務に係る商品等を表示するものとして周知である商標との関係で同号に該当することを理由として、権利濫用の抗弁を主張することの許否
(最三判平29・2・28)
刑 事
▽一 覚せい剤及びコカインの営利目的所持等の事案につき、私人である被告人を、麻薬取締官による覚せい剤密売人に対するおとり捜査に巻き込んだことを理由として、公訴棄却あるいは違法収集証拠排除を求める弁護人の主張を排斥した事例
二 被告人の薬物取引を容認した麻薬取締官の対応が、被告人による覚せい剤等の取引を促進、助長した面があることは否定できず、被告人の意思決定に不当な影響を与えたとして、量刑上、被告人に対する非難が一定程度下がるとされた事例
(大阪地判平29・4・12)
▽警察官が、被告人を車上狙いの現行犯で検挙する目的で無施錠の自動車内に発泡酒一箱を置き、被告人がこれに対して車上狙いの実行に出たところを現行犯逮捕した事案について、捜査の違法を理由に被害届等の証拠の証拠能力を否定し、自白の補強証拠がないとして無罪を言い渡した事例
(鹿児島地加治木支判平29・3・24)
▽当初成人として地方裁判所に起訴されたが、満二〇歳に達していると認めるには合理的な疑いが残るとして公訴棄却判決を受け、家庭裁判所に送致された者につき、二〇歳に満たない者であることを前提に処遇を検討した上、罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認め、事件を検察官に送致した事例
(横浜家決平28・10・17)
判例評論
三六 町立博物館への入館拒否と情報摂取行為の制約──太地町立くじらの博物館事件
(和歌山地判平28・3・25)……中村英樹
三七 ヤフー事件最高裁判決における法人税法一三二条の二所定の「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の意義及びその該当性の判断方法
(最二判平28・2・29)……岩﨑政明
三八 共済契約における対物共済と道路法五八条一項に基づく原因者負担金の支払義務
(東京高判平27・6・24)……今川嘉文