判例時報 No.2337
平成29年9月11日 号 定価:845円
(本体価格:768円+10%税)
憲法訴訟の実践と理論(6)
──営業の自由をめぐる実践と理論の課題──……木下智史
刑法判例と実務
──第二一回 間接正犯──……小林憲太郎
岐路に立つ裁判官(4)
──恵庭OL事件──……伊東秀子
岐路に立つ裁判官(5)
三崎事件──犯人が逃走した「空白の時間帯」──……青木 孝
■判決録
<行政> 3件
<民事> 4件
<知的財産権> 1件
<商事> 1件
<刑事> 2件
◆記 事◆
憲法訴訟の実践と理論(6)
──営業の自由をめぐる実践と理論の課題──……木下智史
刑法判例と実務
──第二一回 間接正犯──……小林憲太郎
岐路に立つ裁判官(4)
──恵庭OL事件──……伊東秀子
岐路に立つ裁判官(5)
三崎事件──犯人が逃走した「空白の時間帯」──……青木 孝
◆判決録細目◆
行 政
◎一 自衛隊が設置し、海上自衛隊及びアメリカ合衆国海軍が使用する飛行場の周辺住民が、当該飛行場における航空機の運航による騒音被害を理由として自衛隊の使用する航空機の運航の差止めを求める訴えについて、行政事件訴訟法三七条の四第一項所定の「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められた事例
二 自衛隊が設置し、海上自衛隊及びアメリカ合衆国海軍が使用する飛行場における自衛隊の使用する航空機の運航に係る防衛大臣の権限の行使が、行政事件訴訟法三七条の四第五項所定の行政庁がその処分をすることがその裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められるときに当たるとはいえないとされた事例
(最一判平28・12・8)
▽一 精神保健指定医の指定取消処分につき、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律一九条の二第二項所定の「指定医として著しく不適当と認められるとき」との処分事由に該当するとした厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったとは認められないとされた事例
二 医業停止処分の処分の期間が既に経過している場合において、当該処分の期間経過後においてもなお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益があるとは認められないから、取消しを求める訴えの利益は認められないとされた事例
(東京地判平28・8・30)
▽道路管理者である市長が特定地区自治会長に対して折り畳み式ゴミボックス設置目的の道路占用許可処分をしたことによって自宅に隣接する交差点の隅切り部分にもゴミボックスが設置されることになった住民の、右許可処分取消訴訟における原告適格が否定された事例
(津地判平28・12・8)
民 事
◎共同相続された定期預金債権及び定期積金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるか
(最一判平29・4・6)
▽自己破産の申立てを受任した弁護士法人の社員である弁護士が財産散逸防止義務に違反したとして、弁護士及び弁護士法人に破産管財人に対する損害賠償責任が認められた事例
(千葉地松戸支判平28・3・25)
▽一 福島第一原発の事故発生後福島県から自主避難した者らが、避難先で起業が奏功しなかったため、さらに転居したことにつき、同原発の運転等に係る原子力事業者は、同転居に伴い生じた損害を賠償する責任を負わないとされた事例
二 福島第一原発の事故発生後の福島県からの自主避難につき、一定期間経過後は避難を継続する合理性が認められず、同原発の運転等に係る原子力事業者は、同期間経過後の避難生活に伴う損害を賠償する責任を負わないとされた事例
三 福島第一原発の事故発生後福島県から自主避難した者が、避難開始後うつ病等に罹患したことにつき、同事故がうつ病等の発症の主な原因の一つであるとして、同原発の運転等に係る原子力事業者は、うつ病等の発症に伴い生じた損害を賠償する責任を負うとした上、発症後同事故以外の原因がそれらの悪化に相当程度寄与したとして、民法七二二条二項を類推適用し、同責任を減ずるのが相当とされた事例
四 福島第一原発の事故と相当因果関係のある損害は、「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」等により示された損害に限られないとされた事例
(京都地判平28・2・18)
▽小学一年生が、学校給食に出された白玉汁の直径約二㎝の白玉団子を喉に詰まらせて窒息し、脳死状態となった後死亡したことについて、小学校職員に白玉団子の提供の方法や誤飲事故の救命措置に過失がないとされた事例
(宇都宮地判平29・2・2)
知的財産権
○吸入器に係る本願意匠と引用意匠との類否について、マウスピース部の端部の形態の相違は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に大きな影響を与えるから、本願意匠は、引用意匠と類似するということはできないとされた事例
(知財高判平28・11・30)
商 事
▽一 株式譲渡契約上の価格調整条項に基づく譲渡価格の減額が認められた事例
二 株式譲渡契約上の表明保証違反に基づく売主の損害賠償責任が認められた事例
(東京地判平28・6・3)
刑 事
○千葉県青少年健全育成条例三〇条の規定が「この条例に違反した者が青少年であるときは、この条例の罰則は、青少年に対しては適用しない。」と定める趣旨
(東京高決平28・6・22)
▽絶対的な権力を持つ首謀者のマンションで多数人が生活する特殊な共同生活体で、被告人が、首謀者ら共犯者と共謀して犯したとして起訴された保険金殺人、生命身体加害略取、傷害致死、監禁等において、被告人をいずれの訴因についても有罪とした上で、刑事責任は極めて重大であるが、首謀者に比べて従たる役割であったことなどから、死刑を選択するには躊躇せざるを得ないとして、無期懲役刑に処した事例──尼崎連続不審死事件地裁判決
(神戸地判平27・11・13)
◆最高裁判例要旨(平成二九年五・六月分)