判例時報 No.2136(別冊・総索引付)
平成24年3月1日 号 定価:2096円
(本体価格:1905円+10%税)
<最新判例批評>
渡辺康行 八田卓也 渕 圭吾 岩崎政明 平野哲郎 柳屋孝安
■判決録
<行政> 2件
<民事> 9件
<知的財産権> 2件
<労働> 1件
◆判例特報◆
一 刑事裁判における国民の司法参加と憲法
二 裁判員制度と憲法三一条、三二条、三七条一項、七六条一項、八〇条一項
三 裁判員制度と憲法七六条三項
四 裁判員制度と憲法七六条二項
五 裁判員の職務等と憲法一八条後段が禁ずる「苦役」
(最大判平23・11・16)
◆判決録細目◆
行 政
◎弁護士会の綱紀委員会の議事録のうち「重要な発言の要旨」に当たる部分が民訴法二二〇条四号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当するとされた事例
(最三決平23・10・11)
▽一 在外国民が次回の最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査において在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にあることの確認を求める訴えの適否
二 平成二一年八月三〇日に行われた最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査までに国会が在外国民に最高裁判所の裁判官の審査権の行使を認める制度の創設に係る立法措置を執らなかったことにより在外国民が審査権を行使することができない事態を生じさせていたことの憲法適合性
三 平成二一年八月三〇日に行われた最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査までに国会が在外国民に最高裁判所の裁判官の審査権の行使を認める制度の創設に係る立法措置を執らなかったことにより在外国民が審査権を行使することができない事態を生じさせていたことについて、憲法上要請される合理的期間内に是正がされなかったものとまでは断定することができず、憲法に違反するものとまではいえないものとされた事例
(東京地判平23・4・26)
民 事
◎公有地に係る土地信託契約において、受益者に対する費用補償請求権を定めた旧信託法(平成一八年法律第一〇九号による改正前のもの)三六条二項本文の適用を排除する旨の合意が成立していたとはいえないとされた事例
(最一判平23・11・17)
◎建物の区分所有等に関する法律五九条一項に基づく訴訟の口頭弁論終結後の区分所有権及び敷地利用権の譲受人に対し同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることの可否
(最三決平23・10・11)
○銀行の従業員が顧客に仕組債の購入勧誘をするに当たり、適合性原則にも説明義務にも違反はなかったとして、銀行の損害賠償責任が否定された事例
(東京高判平23・11・9)
○シンジケートローン(協調融資)により融資を受けた会社が破綻した場合に、当該シンジケートローンのアレンジャーが、当該シンジケートローンを組成した者に対して、不法行為による損害賠償の責任を負うとされた事例
○大手銀行からの提案により開始した金利スワップ取引について、銀行側からの説明が不十分であり、契約内容自体も客観的に正当ないし合理性を有するものではなかったなどとして不法行為の成立を認めた上で、約四割の過失相殺がなされた事例
(福岡高判平23・4・27)
▽新設会社の分割行為が詐害行為に当たるとして,詐害行為取消権の範囲内で新設分割が取り消され,価額賠償として債権者の被保全債権の範囲内で新設会社が支払を命じられた事例
(名古屋地判平23・7・22)
▽在日米海軍基地の軍属が基地付近で経営するライブバーで騒いでいた客を店から押出す際に道路に転倒させ死亡させた事故につき、軍属の不法行為に基づく損害賠償責任は認められたが、民事特別法一条一項に基づく国の損害賠償責任は否定された事例
(横浜地判平23・11・24)
▽信用保証会社が,抵当権付債務を代位弁済したことにより,債務者に対する求償権とともに抵当権付きの原債権を取得した後,債務者について民事再生手続が開始され,その再生計画において求償債権が減額され,債務者において再生計画による減額後の求償債務を完済した場合においても,変更前の求償債権額から既払額を控除した限度において右抵当権を行使することができるとされた事例
(千葉地決平23・12・14)
▽政治評論家がテレビ番組において、北朝鮮に拉致され死亡したとの回答を受けた女性につき、外務省は生存しているとして対応しているのに、外務省も死亡したものと思っていると発言したことにつき、同女性の両親が求めた慰謝料請求が認容された事例
(神戸地判23・11・4)
知的財産権
○引用例に記載された発明に特記すべき問題点は存在しなかったことを前提に、引用例に記載されたものとは異なる、向上した特性を有する飽和炭化水素の混合物を使用することにより、鼻用軟膏としての効果を確認することが明細書に記載されている本願発明につき、引用例の実施品に効果がないとか、身体に危害を及ぼすおそれがあると認識していたという出願人の主張を排斥して、「ペトロラタムを基にした鼻用軟膏」に係る発明の進歩性が否定された事例
(知的財産高判平23・9・8)
○一 Yが開設するウェブサイトに掲載したデータ復旧サービスに関する文章が、Xが開設するウェブサイトに掲載したデータ復旧サービスに関するウェブページのコンテンツ又は広告用文章に係るXの著作権(複製権、翻案権、二次的著作物に係る公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)の侵害にも、著作権法一一三条六項のみなし侵害にも当たらないとされた事例
二 YがXによる広告と同一ないし類似の広告をしたからといって、Yの広告が著作権侵害に当たらず、そのほか具体的な権利ないし利益の侵害が認められない以上、不法行為が成立する余地はないとされた事例
(知的財産高判平23・5・26)
労 働
▽コンビニ型店舗の店長が管理監督者とは認められないとして使用者に時間外、休日労働に対する割増賃金及び労基法一一四条に基づく付加金の支払が命じられた事例
(東京地立川支判平23・5・31)
◆最高裁判例要旨(平成二三年一二月分)
判例評論
<総合研究>
行政裁量の手続的審査の実体(中)―ー裁量基準の本来的拘束性……常岡孝好
<最新判例批評>
一一 衆議院小選挙区選挙における区割基準、区割りおよび選挙運動上の差異の合憲性
(最大判平23・3・23)……渡辺康行
一二 住民訴訟における共同訴訟参加の申出につき、これと当事者、請求の趣旨及び原因が同一である別訴において適法な住民監査請求を前置していないことを理由に訴えを却下する判決が確定している場合には、その判決の既判力により、当該共同訴訟参加の申出は不適法として却下されるべきであるとされた事例
(最二判平22・7・16)……八田卓也
一三 破産管財人の源泉徴収義務
(最二判平23・1・14)……渕 圭吾
一四 収用等に係る建物移転補償金に対する課税特例の適用の可否
(最三判平22・3・30)……岩﨑政明
一五 胸痛を訴えて来院した患者が当直医の診断を受けた後急死した場合に、当直医は内科医で循環器の専門でなく急性心筋梗塞を診断した経験もなかったものであるときは、その内科医に循環器の専門医と同等の診断を要求することは困難であるとして、医師に過失がないとされた事例
(福岡高判平22・11・26)……平野哲郎
一六 労働組合法上の労働者性判断の基準
(最三判平23・4・12)……柳屋孝安