判例時報 No.2160
平成24年11月1日 号 定価:1466円
(本体価格:1333円+10%税)
<最新判例批評>
岡本裕樹 大澤 彩 堤 龍也 吉田広志
辻田芳幸 三柴丈典 藤本 茂 伊藤 司
■判決録
<行政> 1件
<民事> 5件
<知的財産権> 1件
<商事> 2件
<労働> 1件
<刑事> 1件
◆判決録細目◆
行 政
▽特別監視地域等に指定された後に一定程度減車していないことや増車したことを理由として加重された道路運送法四〇条に基づく輸送施設使用停止処分が、裁量権の範囲を逸脱し又は濫用した違法なものであるとして取り消された事例
(大阪地判平24・2・3)
民 事
◎貸金業者Yの完全子会社である貸金業者Aが、その顧客Xとの間の基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引に係る債権をYに譲渡した場合において、YがAのXに対する過払金返還債務を承継したとはいえないとされた事例
(最二判平24・6・29)
○運送会社の従業員が石綿粉じんにばく露し中皮腫を発症死亡した事故につき、運送会社は安全配慮義務違反による損害賠償責任を免れないが、石綿原料等の運搬を委託した会社には安全配慮義務違反又は不法行為に基づく損害賠償責任を認めることができないとされた事例
(大阪高判平24・5・29)
▽ミネラルウォーターの製造等のために使用されている送水管を同送水管が設置された土地の所有者等が切断したことが不法行為に当たるとされ、製造業者の営業上の損害が認められた事例
(東京地判平24・4・27)
▽終身利用権付き介護有料老人ホームに平成一八年一月四日に入所した八七歳の男性が褥瘡が悪化し細菌感染による敗血症を発症して同月二一日に死亡した場合について、特定施設入所者生活介護利用契約の不履行・注意義務違反を認め、遺族に対する損害賠償責任が認められた事例
(横浜地判平24・3・23)
▽運送会社の運転手が石綿の運送業務中に石綿粉じんを吸引し悪性中皮腫等に罹患し死亡した事故につき、会社の安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任が認容された事例
(神戸地尼崎支判平24・6・28)
知的財産権
○名称を「血管内皮増殖因子拮抗剤」とする発明について、「本願明細書には、hVEGF拮抗剤が加齢性黄斑変性に対し治療効果を有することを示した実施例等に基づく説明等は一切存在しないから、本願明細書の記載が、本願発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものということができない。」と判示して、実施可能要件を満たさないとした審決が維持された事例
(知的財産高判平24・6・28)
商 事
◎一 商法(平成一七年法律第八七号による改正前のもの)二八〇条ノ二一第一項に基づく株主総会決議による委任を受けた取締役会が定めた新株予約権の行使条件をその発行後に変更する取締役会決議の効力
二 非公開会社において株主総会の特別決議を経ないまま株主割当て以外の方法によってされた募集株式発行の効力
三 非公開会社が株主割当て以外の方法により発行した新株予約権の行使条件に反した当該新株予約権の行使による株式発行に無効原因がある場合
(最三判平24・4・24)
▽債務者会社の火災保険金請求権につき差押命令により取立権を取得した債権者による保険会社に対する保険金請求について、火災が債務者会社の取締役の故意の放火によるものであるとして、棄却された事例
(広島地福山支判平24・1・18)
労 働
◎基本給を月額で定めた上で月間総労働時間が一定の時間を超える場合に一時間当たり一定額を別途支払うなどの約定のある雇用契約の下において、使用者が、各月の右一定の時間以内の労働時間中の時間外労働についても、基本給とは別に、労働基準法(平成二〇年法律第八九号による改正前のもの)三七条一項の規定する割増賃金の支払義務を負うとされた事例
(最一判平24・3・8)
刑 事
◎一 刑訴規則二七条一項ただし書にいう「特別の事情」があるとされる場合
二 三人を超える弁護人の数の許可につき刑訴規則二七条一項ただし書にいう「特別の事情」があるとされた事例
(最三決平24・5・10)
◆最高裁判例要旨(平成二四年七月分)
判例評論
五九 貸金業者と消費貸借取引をした債務者が、平成一五年に、弁護士を代理人として、貸金業者との間で、残債務の存在を確認してその一割を弁済して清算する旨の裁判外の和解契約をした場合において、和解契約が公序良俗違反により無効となることはなく、みなし弁済の規定の適用の有無を含めて貸金債権や不当利得返還請求権の有無及び金額に関する争いをやめることを合意したものであるときは、錯誤無効の主張が許されず、事情変更による和解契約の解除も認められないとされた事例
(東京高判平23・9・9)……岡本裕樹
六〇 いわゆるリボルビング方式の貸付けについて、貸金業者が貸金業の規制等に関する法律(平成一八年法律第一一五号による改正前のもの)一七条一項に規定する書面として交付する書面に個々の貸付けの時点での残元利金につき最低返済額を毎月の返済期日に返済する場合の返済期間、返済金額等の記載をしない場合、当該貸金業者は、最高裁平成一七年〓受第五六〇号同年一二月一五日第一小法廷判決・民集五九巻一〇号二八九九頁の言渡し日以前であっても、過払金の取得につき民法七〇四条の「悪意の受益者」であると推定されるか
(最一判平23・12・1)……大澤 彩
六一 競売手続により区分所有建物を買い受け、管理組合に対し、前所有者が滞納した管理費等を支払った買受人が、破産手続を経て免責許可決定を受けた前所有者に対し、求償請求をし、当該区分所有建物が破産財団から放棄された後、買受人がこれを取得するまでに発生した管理費等について求償が認められた事例
(東京高判平23・11・16)……堤 龍弥
六二 プラバスタチンナトリウム(プロダクト・バイ・プロセス・クレーム)知財高裁大合議判決
(知的財産高判平24・1・27)……吉田広志
六三 テレビCM原版が映画の著作物であると認めた上で、Xが映画製作者であることを否定して著作権を有しないとされた事例――ケーズデンキ・テレビCM事件
(東京地判平23・12・14)……辻田芳幸
六四 東芝(うつ病・解雇)事件
(東京高判平23・2・23)……三柴丈典
六五 労災認定に関する労働時間
(大阪地判平23・10・26)……藤本 茂
六六 弁護士資格等がない者らが、ビルの所有者から委託を受けて、そのビルの賃借人らと交渉して賃貸借契約を合意解除した上で各室を明け渡させるなどの業務を行った行為について、弁護士法七二条違反の罪が成立するとされた事例
(最一決平22・7・20)……伊藤 司