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判例時報 No.2427〔判例評論 No.732〕
             2020年2月1日 号 定価:1470円 (本体価格:1336円+10%税)

<最新判例批評>
 榎   透  原田 大樹  清水 晶紀
 柴田洋二郎  柿﨑  環
 
刑法判例と実務
 ──第50回 公務執行妨害罪の周辺──……小林憲太郎
 
法曹実務のための行政法入門(22)
 ──行政訴訟⑥──当事者訴訟、行政訴訟の審理等(その一)……高橋 滋
 
■判決録
<行政> 1件
<民事> 7件
<刑事> 1件
<知的財産権> 1件


◆記 事◆

刑法判例と実務
 ──第50回 公務執行妨害罪の周辺──……小林憲太郎

法曹実務のための行政法入門(22)
 ──行政訴訟⑥──当事者訴訟、行政訴訟の審理等(その一)……高橋 滋

◆判決録細目◆

行 政

▽1 生活保護を受け、生活扶助について障害者加算の認定を受けていた被保護者に対し、精神障害者保健福祉手帳が更新されなかったことを理由にその要件該当性が失われたとしてされた生活保護法63条に基づく保護費の返還処分が違法とされた事例
2 障害者加算を削除する保護決定処分の国家賠償法上の違法性及び福祉事務所長の過失を認めて国家賠償請求を一部認容した事例

(東京地判平31・4・17)

民 事

◎統合失調症により精神科の医師の診療を受けていた患者が中国の実家に帰省中に自殺した場合において、前記医師に前記患者の自殺を防止するために必要な措置を講ずべき義務がないとされた事例

(最三判平31・3・12)

○夫婦の別居期間が7年に及ぶ場合であっても、離婚請求者に婚姻関係維持の努力や別居中の他方配偶者への配慮を怠った事情があるときには、婚姻を継続し難い重大な事由があるとはいえず、信義誠実の原則に照らしても離婚請求が許されないとした事例

(東京高判平30・12・5〈参考原審:東京家判平30・6・20掲載〉)

○未成年者を連れて別居を開始した非監護親と未成年者との面会交流について、未成年者の連れ去りその他の事情に配慮して、監護親の立会いを認めて実施するのが相当であるとした事例

(東京高決平30・11・20〈参考原審:千葉家松戸支審平30・8・22掲載〉)

▽中顔面低形成に対する手術に伴い気管切開術を受けた患者が、術後一般病棟に入院中、看護師により気管切開カニューレから痰の吸引を受けた際に容態が急変し、低酸素脳症による遷延性意識障害の後遺症を負ったことについて、看護師らがアセスメントを十分にしていなかった過失があるとされた事例

(東京地判平31・1・10)

▽1 頭部MRA検査を受けた高齢患者(原告)が、診察を担当した医師に未破裂脳動脈瘤の存在を見落とされ、約11か月後に同動脈瘤が破裂し、くも膜下出血による後遺障害を負ったことについて、同動脈瘤の治療に関する適切な説明がされたとしても、原告が直ちに又は経過観察中に外科的治療を選択した高度の蓋然性があったとはいえず、前記担当医師の注意義務違反と後遺障害との間には相当因果関係がないとされた事例
2 前記担当医師の前記動脈瘤見落としの注意義務違反により、その直後に治療方法に関する説明がなされなかったことが、原告の外科的治療を選択する自己決定権を侵害する不法行為になるとして慰謝料が認められた事例

(神戸地判平31・4・9)

▽1 指定暴力団の構成員による殺人未遂事件について、組長ら幹部が使用者責任を負うとされた事例(①事件)
2 指定暴力団の構成員による殺人未遂事件について、組長ら幹部が共同不法行為責任を負うとされた事例(②事件)

(①②福岡地判平31・4・23)

刑 事

○大型店舗の本体建物(1、2階が売り場、3階と4階〔屋上部分〕が駐車場になっている)に接合する独立建物とはなっていない車路スロープ(地上1階から3階駐車場と、3階駐車場から4階駐車場をそれぞれ結ぶ上下2段のスロープからなる)を床スラブで接合しなかったために、東日本大震災の際に車路スロープが崩壊し、その結果、その下のスロープ上を走行又は停止していた自動車が押しつぶされ、また、スロープ上に避難していた客が崩落の衝撃により転倒するなどして死傷者が出た事故につき、構造設計を引き継いで担当した建築士である被告人に対し、床スラブで接合する内容の自らの構造設計の内容を、設計の責任者である意匠設計担当者に正確に把握できるように適切に配慮すべき注意義務を怠ったとして有罪とした原判決を破棄し、被告人を無罪とした事例

(東京高判平28・10・13〈参考原審:東京地立川支判平28・2・8掲載〉)

知的財産権

○1 平成26年法律第36号による改正前の特許法の下において、特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益は、特許権消滅後であっても、特許権の存続期間中にされた行為について、何人に対しても、損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり、刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情がない限り、失われることはない
2 引用発明として主張された発明が「刊行物に記載された発明」(特許法29条1項3号)であって、当該刊行物に化合物が一般式の形式で記載され、当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場合には、特定の選択肢に係る技術的思想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情がない限り、当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出することはできず、これを引用発明と認定することはできない

──ピリミジン誘導体事件
(知財高判平30・4・13)

判例評論

63 公民館の職員が、俳句サークルの会員が詠んだ憲法9条を内容とする俳句を公民館だよりに掲載しなかったことが、思想、信条を理由に不公正な取扱いをしたことにより、右会員の人格的利益を侵害したとして国家賠償法上違法とされた事例

(東京高判平30・5・18)……榎  透

64 産業廃棄物処理施設の設置許可申請者が県条例に定める周辺住民への周知義務を履行しなかったとしても、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の適正配慮要件・設置許可取消事由に該当するものではないとして、その取消処分を取り消した環境大臣の裁決の取消請求が棄却された事例

(名古屋高判平30・4・13)……原田大樹

65 伊方原発3号機の運転差止めを命じる仮処分申立てにおいて、阿蘇の破局的噴火の可能性と避難計画の不十分性を肯定しつつ人格権侵害の具体的危険性を否定した事例

(高松高決平30・11・15)……清水晶紀

66 有価証券届出書・目論見書の虚偽記載と元引受証券会社の民事責任―FOI事件

(東京高判平30・3・23)……柿﨑 環

67 小学校教諭が、休日に防災訓練の会場に向かう途中で担任児童宅に訪問した際に、児童宅で飼育する犬にかまれた災害の公務遂行性

(東京高判平30・2・28)……柴田洋二郎

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