判例時報とは

発刊の辞

我妻栄「発刊の辞」

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 『判例時報』は、判例関係情報や法的時事を紹介する目的で月3回発行される雑誌である。

 判例時報の第1号が発行されたのは、戦後8年目にあたる1953年6月1日である。

 情報技術が発達し、詳細な判例情報をインターネットで検索できる今日とは大きく異なり、その当時、判例を詳細に紹介する媒体はほとんどなかった。裁判所内部では各種の裁判集が配布されていたが、これを一般の人々が目にする機会はほとんどなかった。

 法律的時事問題を扱う媒体として、当時、既に25年の伝統をもつ『法律時報』があった。法律時報でも判例の要旨は紹介されていたが、法律資料の提供を主な軸としている同誌では、紙幅の限度もあり、判例を「詳しく」掲載することは難しかった。そこで、判例の事実や判断を詳しく紹介・解説するため、法律時報の姉妹誌として『判例時報』は生まれるべくして生まれた。

 戦後日本は平和主義を謳うとともに、法治主義国家として、人権を保障し、民主主義を維持・発展させることを誓った。

 法によって統治される社会に起きた問題は、法によって解決される。頼りになるのは、生きた法である。生きた法を知るためには、判例(裁判例)を知らなければならない。そして、判例を知るには、その意味が解らなければならない。そのために判例時報は、判例全文を紹介するだけではなく、その解説をも付するのである。

 判例は、裁判所と専門家の独占物ではなく、一般の人の生きる技術であり財産である。

 判例時報は、判例関係情報を、より早くより深く提供するため、今日も編集されている。

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