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判例時報 No.2130
             平成24年1月1日 号 定価:838円 (本体価格:762円+10%税)

 


◆判決録細目◆

民 事

◎家事審判法九条一項乙類に掲げる事項につき他の家庭に関する事項と併せて申し立てられた調停が成立しない場合における審判への移行の有無(最三決23・7・27)

○複数の店舗に預金債権があるときは預金債権額合計の最も大きな店舗の預金債権を対象とする旨の方式による差押命令の申立てと差押債権の特定(積極)(東京高決23・10・26)

○連棟式一棟建物の区分所有住戸部分の収去土地明渡の強制執行の対象部分には隣接住戸部分の区分所有権者が共有持分権を有する共有部分である梁、支柱等が含まれており、右隣接住戸部分の区分所有権者は強制執行の冒的物について譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者に当たるとして、右隣接住戸部分の区分所有権者の第三者異議の訴えが認容された事例(大阪高判23・3・30)

▽被相続人から建物所有の目的で土地の使用貸借がされ、相続人が占有者に対して建物の収去、土地の明渡しを請求する訴訟を提起し、訴訟の係属中、右相続人の訴訟代理人弁護士の周旋等を受けて右土地を購入した者が同様な内容の請求をした場合について、右売買が通謀虚偽表示であるとされた事例(東京地判23・6・28)

▽放送局の公式ウェブサイトに掲載された記事等につき名誉穀損が否定され、当該記事等において批判された者のインターネットウェブサイト上の動画中の発言につき名誉穀損が肯足された事例(東京地判23・4・2)

▽一第三セクター社の営業路線内で、同路線に乗り入れていたJR西冒本の列車が第三セクター社の列車と正面衝突して多数の死傷者が発生した事故に関し、JR西日本が、第三セクター社並びに同社に出資、支援をする県及び市(事故当時は町)に対し、事故の被害者らに支払った補償金や事故後の対応に要した費用等を、事故後にこれら四者で締結した協定等に基づき求償請求した事案において、事故当事者の責任割合が、第三セクター社七割、JR西日本三割であると認定された事例

二 県及び市が、事故後の協定等において、JR西日本に対し、第三セクター社の支払不能によってJR西日本が負う損失を担保する旨の損失補償契約(損害担保契約)をしたとは認められないなどとして、JR西日本の県・市に対する請求が棄却された事例

三 一を前提として、事故におけるJR西日本の損害が算出された事案

四 求償債権成立時点に関する判断事例
――信楽高原鐵道列車事故求償金請求訴訟判決(大阪地判23 ・4・27)
▽整骨院での施術の練習によって腰痛症・坐骨神経痛の傷害を負った被害者の損害賠償請求について、七〇%の大幅な素因減額が認められた事例(甲府地判23・6・16)

知的財産権

○物の発明については、その物を製造する方法についての具体的な記載が必要であるが、そのような記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき当業者がその物を製造することができるのであれば、実施可能要件を満たす(知的財産高判23・4 ・14)

○ 「株式会社NTTデータセキスイシステムズ」との標章は、「セキスイ」との商標と同一又はこれと類似する商標とはいえないとして、商標法五三条一項に基づく審判請求を不成立とした審決に誤りはないとされた事例(知的財産高判23・2・28)

商 事

▽保険会社等に対する被保険者による火災保険金等の請求につき、本件火災は被保険者の故意又はその者と意を通じた第三者による放火によるものと推認し、故意免責により請求が棄却された事例(さいたま地熊谷支判23・9・26)

労 働

◎市立小学校又は中学校の教諭らが勤務時間外に職務に関連する事務等に従事していた場合において、その上司である各校長に上記教諭らの心身の健康を損なうことがないよう注意すべき義務に違反した過失があるとはいえないとされた事例(最三判23・7・12)

刑 事

◎卒業式の開式直前に保護者らに対して大声で呼び掛けを行い、これを制止した教頭らに対して怒号するなどし、卒業式の円滑な遂行を妨げた行為をもって刑法二三四条の罪に問うことが、憲法二一条一項に違反しないとされた事例

――いわゆる都立板橋高校事件上告審判決(最一判23・7・7)

判例評論

一 一 固定資産税等賦課決定処分に対する不服が固定資産課税台帳に登録された価格についてのものに当たることが後に判明したことから、固定資産評価審査委員会の決定の取消しを求める訴えが、固定資産税等賦課決定処分の取消しを求める訴えと選択的追加的に併合して出訴期間を徒過して授起された場合に「正当な理由」の有無が問題となった事例

二 家屋に設置された昇降機設備が当該家屋と一体のものではないことを理由として固定資産課税台帳に登録された当該家屋の価格の減額を求める審査の申出が、固定資産評価審査委員会の審査申出事項に当たるとされた事例

(東京地判22・9・29) ……今本啓介

二 届出のない再生債権である過払金返還請求権について、届出があった再生債権と同じ条件で弁済する旨を定める再生計画と上記過払金返還請求権の帰すう
(最三判23・3・1)…… 栗田陸雄

三 「福島県喜多方市におけるラーメンの提供」を指定役務として出願された本願商標「喜多方ラーメン」は、地域団体商標における周知性要件を具備していないとした拒絶査定不服審判を維持した事例

(知的財産高判22・1・15)…… 今村哲也

四 一 児童ポルノを、不特定又は多数の者に販売して提供するとともに、不特定又は多数の者に販売して提供する目的で所持した場合の罪数

二 児童ポルノであり、かつ、刑法一七五条のわいせつ物である物を、不特定又は多数の者に販売して提供するとともに’不特定又は多数の者に販売して提供する目的で所持した行為が、全体として一罪とされた事例

(最二決21 ・7・7) ……林美月子

五 犯人の一時的な海外渡航による公訴時効停止の効力

(最一決21・10・20)……鮫越溢弘

六 被告人の検察官詞書の取調べ請求を却下した第一審の訴訟手続について、同調書が犯行場所の確定に必要であるとして、その任意性に関する主張立証を十分にさせなかった点に審理不尽があるとした控訴審判決が、刑訴法二九四条、三七九条、刑訴規則二〇八条の解釈適用を誤っているとされた事例―-広島女児殺害事件上告審判決

(最二判21・10・16)……斎藤司

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