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判例時報 No.2115
             平成23年8月11日 号 定価:円 (本体価格:円+10%税)

 


◆記事◆

最高裁民事破棄判決等の実情(上)―平成二二年度……田中秀幸 倉地康弘

現代型取引をめぐる裁判例(283)……升田純

◆判例特報◆

特許権の存続期間の延長登録出願の理由となった薬事法一四条一項による製造販売の承認に先行して当該承認の対象となった医薬品と有効成分並びに効能及び効果を同じ-する医薬品について同項による製造販売の承認がされていることを延長登録出願の拒絶の理由とすることが許されない場合―「パシーフカプセル30㎎」特許権存続期間延長登録事件上告審判決(最一判23・4・28)

◆判決録◆

行政

〇一 租税法上具体的否認規定がない場合でも、租税回避を目的として、当事者の選択

した契約が不存在と認定されるとき又は当事者の真の効果意思が欠缺し若しくは虚偽表示により契約が無効と認定されるときには、当事者の選択した契約類型を租税回避行為として否認することが許されるが、本件では否認することができないとされた事例

二 租税回避行為の有無が争点となる国際的取引行為を課税要件とする場合の準拠法は、当事者間の合意があっても、法の適用に関する通則法四二条の適用によって、日本の私法を適用すべきとされた事例

(東京高判22・5・27)

民事

◎新聞社が通信社からの配信に基づき自己の発行する新聞に記事を掲載するに当たり当該記事に摘示された事実を真実と信ずるについて相当の理由があるといえる場合(最一判23・4・28)

◎妻が、夫に対し、夫との問に法律上の親子関係はあるが、妻が婚姻中に夫以外の男性との間にもうけた子につき、離婚後の監護費用の分担を求めることが、権利の濫用に当たるとされた事例(最二判23・3・18)

▽債務整理にあたった弁護士法人の代表弁護士に対する懲戒申立てについて不法行為が成立しないとされた事例(東京地判23・3・25)

▽一 再生手続開始前に委託を受けた弁護士の報酬請求権及び費用償還請求権は民事再生法一一九条一号に該当しない

二 再生手続開始前に委託を受けた弁護士の報酬請求権は民事再生法一一九条二号に該当しない

三 再生手続開始前に委託を受けた弁護士の費用償還請求権のうち再生手続開始前に発生したものは民事再生法一一九条二号に該当しないが、再生手続開始後に発生したものは同号に該当する

四 双方未履行双務契約である委任契約について履行の請求が行われたと認められなかった事例

(東京地判23・2・8)

▽発生土処分場建設事業について、周辺住民ら、事業対象地に存する湿地帯及びその保全を目的として設立された権利能力なき団体が原告となってした人格権等に基づく差止請求が、湿地帯それ自体の訴えは不適法として却下され、その他の原告らの請求は棄却された事例(横浜地判23・3・31)

▽友人二名と集団下校中に交通事故にあって死亡した中学生につき、祖父母、姉妹の固有の慰謝料が認められたほか、友人二名にも各三〇万円の慰謝料が認められた事例(宇都宮地判23・3・30)

知的財産権

○特許権の存続期間の延長登録出願について、延長の理由となった薬事法一四条一項の医薬品の承認(本件処分)に先行して、処分の対象となった物及び処分の対象となった物についての特定された用途において本件処分と重複する医薬品製造承認事項一部変更承認がなされており、発明の実施に本件処分が必要であったとは認められないとして出願を拒絶した審決が、特許法六七条の三第一項三号の解釈・適用の誤りがあるとして取り消された事例(知的財産高判22・3 ・28)

○一 動画投稿サービスを管理運営する会社が、経済的利益を得るために、その支配管理するサイトにおいて、ユーザの複製行為を誘引し、実際にサーバに複製権を侵害する動画が多数投稿されることを認識しながら、侵害防止措置を講じることなくこれを容認し、蔵置する行為は、ユーザによる複製行為を利用して、自ら複製行為を行ったと評価することができるものであり、また、サーバに蔵置した動画ファイルを送信可能化して閲覧の機会を提供しているとして、複製権及び公衆送信権(送信可能化を含む。)の侵害主体であるとされた事例

二 動画投稿サービスを管理運営する会社が、ユーザの投稿により提供された情報(動画)を、「電気通信役務提供者の用いる特定電気通信設備の記憶媒体又は当該特定電気通信設備の送信装置」に該当するサーバに、「記録又は入力した」ものであるとして、プロバイダ責任制限法二条の「発信者」に該当するとされた事例

(知的財産高判22・9・8)

▽信用金庫の会員が、常務会理事が決定した融資が金庫に対する善管注意義務違反にあたるとして求めた会員代表訴訟が認容された事例(宮崎地判23・3・4)

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