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判例時報 No.2392
             平成31年3月1日 号 定価:2098円 (本体価格:1907円+10%税)

<最新判例批評>
 柳瀬 昇 菊池馨実 松久和彦 照沼亮介
 
刑法判例と実務
 ──第三九回 誤振込みの周辺──……小林憲太郎
 
成年後見制度と意思決定サポートシステム(5)
 高齢者の消費生活の安全と法的支援……カライスコス アントニオス
 
■書評
民法理論の対話と創造研究会 編 『民法理論の対話と創造』
評者 餘多分 宏聡
 
■特集
分限裁判を考える
 ──最大決平30・10・17を受けて──
門口正人  大賀浩一  木谷 明
毛利 透  木下昌彦  木村草太  金 尚均
 
■判決録
<民事> 4件
<知的財産権> 2件
<刑事> 4件


◆記 事◆

刑法判例と実務
 ──第三九回 誤振込みの周辺──……小林憲太郎

成年後見制度と意思決定サポートシステム(5)
 高齢者の消費生活の安全と法的支援……カライスコス アントニオス

◆書 評◆

民法理論の対話と創造研究会 編『民法理論の対話と創造』(日本評論社、二〇一八年)
評者……餘多分 宏聡

◆特 集◆

分限裁判を考える
──最大決平30・10・17を受けて──
……門口正人 大賀浩一 木谷 明 毛利 透 木下昌彦 木村草太 金 尚均

◆判決録細目◆

民 事

○日本で婚姻後米国に移住していずれも米国に帰化(いずれも日本国籍離脱届未了)した夫婦に関し、米国籍取得後に妻に無断で夫が日本方式の協議離婚届を提出し、かつ、夫に遺棄されて日本に帰国したと主張する日本在住の妻が、夫の死亡後に日本の検察官を被告として提起した離婚無効確認訴訟(夫の再婚相手であり日本から米国に帰化した米国在住の女性が被告を補助するため訴訟参加)につき、日本の国際裁判管轄を肯定した事例

(東京高判平30・7・11〈参考原審:東京家判平30・1・12掲載〉)

○不動産所有権移転登記のいわゆる連件申請における前件申請の登記義務者がなりすましであったという地面師詐欺事案において、前件申請の代理人たる弁護士が登記義務者の本人確認など代理人業務の全部を事務員(元弁護士)に丸投げしていること及び前件申請の登記義務者が登記識別情報を有しておらず、その印鑑証明の真正にも疑義があることを知りながら、前件申請代理人との接触及び印鑑証明の真正の確認を怠ったまま連件申請を実行した後件申請の代理人たる司法書士には、注意義務違反があり、売買代金を騙取された買主に対する損害賠償の責めに任ずる(過失相殺五割)とされた事例

(東京高判平30・9・19〈参考原審:東京地判平29・11・14掲載〉)

▽サッカーの社会人リーグにおける選手同士の接触・負傷事故について、競技上の行為が社会的相当性を超え、違法性が阻却されないとして、選手の不法行為が肯定された事例

(東京地判平28・12・26)

▽中学二年の女子卓球部員が同部の練習場所であった中学校の校舎の四階廊下の窓から転落した事故につき、顧問の教諭には転落防止措置を採った上で廊下の窓を開ける作業をするように指示すべき注意義務の違反があったとして、中学校を設置する町に対して国家賠償法一条一項に基づく損害賠償を命じた事例

(広島地判平30・3・30)

知的財産権

▽発明の名称を「ブルニアンリンク作成デバイスおよびキット」とする特許権の侵害を認めた上で、特許法一〇二条二項における推定覆滅について、侵害品全体に対する特許発明の実施部分の価値の割合を理由とする覆滅率を二五%、その他の考慮要素を理由とする覆滅率を二五%(合計五〇%)と判断して、損害賠償を命じた事例

(東京地判平30・3・1)

▽不正競争防止法(平成二七年法律第五四号による改正前のもの)二条一項一三号の不正競争(品質誤認表示)における「品質、内容…について誤認させるような表示」といえるためには、その前提として、需要者の間において、当該表示が商品の品質や内容を示す表示であると一般に認識されることが必要であるとした上で、被告各表示については品質、内容について誤認させるような表示であるといえないとして、請求を棄却した事例──工楽松右衛門事件

(大阪地判平29・3・16)

刑 事

○一 累犯関係にある覚せい剤取締法違反の罪(自己使用・単純所持)を犯した被告人に対して原判決が懲役二年四月の全部実刑に処したのは、刑の一部の執行を猶予しなかった点で裁量を誤ったものであるとして、量刑不当により原判決を破棄した事例(①事件)
二 覚せい剤取締法違反罪等による刑の執行猶予期間中に覚せい剤取締法違反の罪(自己使用・共同所持)を犯した要通訳事件の被告人に対して懲役一年四月の全部実刑に処した原判決は、刑の一部執行猶予の必要性及び相当性の評価を誤ったものであるとして、量刑不当により原判決を破棄した事例(②事件)

(①東京高判平29・7・18〈参考原審:横浜地判平29・3・22掲載〉、
 ②東京高判平29・12・20〈参考原審:前橋地判平29・8・18掲載〉)

○一 高速道路上でスマートフォンのアプリを閲覧・操作するなどして前方注視を怠り、交通事故を起こして人を死傷させた被告人に対し、検察官の求刑を超える刑期の実刑に処した原判決の量刑を相当であるとして維持した事例
二 スマホながら運転による前方不注視は、著しく危険であって過失運転致死傷罪の中でも類型的に犯情が悪い部類に属する上、運転者が自らの意思で積極的に選択した行為が招いた事態であるから、その意思決定に対する非難の程度も相当高いと判断した事例

(大阪高判平30・10・4〈参考原審:大津地判平30・3・19掲載〉)

▽警察官が、参考人が供述していない虚偽の内容を付け加えて記載した供述調書を作成し、これを疎明資料として捜索差押許可状を請求し、その発付を受けて捜索を実施し、大麻を差し押さえたという事案について、違法に至った経緯や態様、違法の重大性、令状主義を潜脱する意図の強さも考慮し、大麻及びこれと一体性を有する証拠は違法収集証拠として排除されるのが相当などとして、被告人に無罪を言い渡した事例

(横浜地判平28・12・12)

判例評論

五三 死刑判決に裁判員を関与させること及び死刑選択につき合議体構成員の全員一致を求めないことの合憲性――心斎橋通り魔事件控訴審判決

(大阪高判平29・3・9)……柳瀬 昇

五四 厚生年金保険法(昭和六〇年法律第三四号による改正前)四七条に基づく障害年金の支分権の消滅時効の起算点

(最三判平29・10・17)……菊池馨実

五五 非親権者である父親が、訴訟上の和解において合意された子らの養育費についての免除又は減額を求めた事案において、親権者である母親が再婚し、再婚相手が子らと養子縁組したことは、養育費を見直すべき事情に該当し、養親らだけでは子らについて十分に扶養義務を履行することができないときは、非親権者である実親は、その不足分を補う養育費を支払う義務を負い、その額は、生活保護法による保護の基準が一つの目安となるが、それだけでなく、子の需要、非親権者の意思等諸般の事情を総合的に勘案すべきとされた事例

(福岡高決平29・9・20)……松久和彦

五六 共犯者による欺罔行為後だまされたふり作戦開始を認識せずに共謀の上被害者から発送された荷物の受領行為に関与した者が詐欺未遂罪の共同正犯の責任を負うとされた事例―だまされたふり作戦事件上告審決定

(最三決29・12・11)……照沼亮介

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