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判例時報 No.2232
             平成26年11月1日 号 定価:1466円 (本体価格:1333円+10%税)

<最新判例批評>
 占部裕典 今尾 真 寺崎嘉博 棚村政行
 中野哲弘 三井正信 城下裕二
 
■判決録
<行政> 1件
<民事> 5件
<知的財産権> 1件
<商事> 1件


◆判例特報◆

 特許権の存続期間延長登録出願に係る拒絶査定不服審判請求に対し、本件処分によって可能となった「特許発明の実施」は、先行処分によって実施できるようになっており、本件特許発明の実施に本件処分を受けることが必要であったとは認められないとの理由により、請求不成立とした審決に対し、本件処分によって禁止が解除された本件医薬品の製造販売等の行為は先行処分では解除されていないとして、審決が取り消された事例
 ――ベバシズマブ事件知財高裁大合議判決(知的財産高判平26・5・30)

◆判決録細目◆

行 政

○近隣居住者間の紛争の当事者から交渉を受任した弁護士において、相手方の勤務先会社に対し、相手方が嫌がらせ行為をしているので指導監督など必要な対応を要望する旨の通知書を送付することは、弁護士の行為として不適切であり、その品位を失うべき非行に当たり、所属弁護士会による戒告の懲戒処分を相当とする判断には、裁量権の逸脱又は濫用はないとされた事例
(東京高判平25・10・30)

民 事

○離婚後に未成年者らの親権者とされた元妻が家事審判で定められた未成年者らと元夫との面会交流を全く履行しないために間接強制が申し立てられた場合に、未成年者らの引渡しの方法が特定されていないとして却下した原決定が取り消され、間接強制の申立てが認容された事例

(東京高決平26・3・13)

○学校法人朝鮮学園を中傷する街頭宣伝が学校の授業を妨害するなどとし、同学園による損害賠償及び差止請求が認容された事例

(大阪高判平26・7・8)

▽一 いわゆるラグジュアリーホテル用の建物に係る賃貸借契約において当事者が賃料額決定の要素とした事情を考慮して賃料減額請求の当否及び相当な賃料額について判断された事例
二 いわゆるラグジュアリーホテル用の建物に係る賃貸借契約において、賃貸人が賃借人との間で一年目の賃料の一部の支払を猶予し、これをホテル事業の業績が良好になることを不確定期限として支払う旨の合意をしたとの主張が排斥された事例

(東京地判平25・10・9)

▽刑務所の幹部職員らが報復目的で受刑者を保護室に収容し、夏季であるのに同室の床暖房を最大出力で作動させ、受刑者に火傷を負わせたことにつき、国の国家賠償責任が認められた事例

(鹿児島地判平26・7・9)

▽長男を殺人事件の被疑者とする県警察の公開捜査及び警察庁の捜査特別報奨金広告により、その父親が名誉を毀損されたとして、県及び国に対して求めた人格権に基づく公開捜査及び右特別報奨金広告の中止並びに国家賠償法に基づく損害賠償請求がいずれも棄却された事例

(盛岡地判平26・4・11)

知的財産権

▽平成二三年法律第六三号による改正前の特許法一一二条の二第一項所定の「その責めに帰することができない理由」が認められないとされた事例

(東京地判平26・1・31)

商 事

▽一 独占禁止法二四条に基づき作為を求める訴えが適法であるとされた事例
二 戸建て向けFTTHサービスに係る第一種指定電気通信設備である加入者光回線設備に一分岐端末回線単位での方式による接続をしようとする電気通信事業者は、総務大臣による当該接続に係る接続約款の認可又は当該接続に関する協定の認可がなければ、独占禁止法二四条に基づき、当該設備を設置する他の電気通信事業者に対し、当該接続を請求することができないとされた事例

(東京地判平26・6・19)

◆最高裁判例要旨(平成二六年七月分)

判例評論

七四 一 建築当初の評価により固定資産課税台帳に登録された価格についての審査申出期間や出訴期間が経過した後に、建築当初の評価が不合理であることを理由として、その後の基準年度の評価を争うことができる場合

 二 建築当初の評価が不合理であるとはいえないとされた事例
(東京地判平23・12・20)……占部裕典

七五 保証人が主たる債務を相続したことを知りながら保証債務の弁済をした場合における主たる債務の消滅時効の中断

(最二判平25・9・13)……今尾 真

七六 死刑確定者又はその再審請求弁護人が再審請求に向けた打合せをするために秘密面会の申出をした場合に、これを許さない刑事施設の長の措置は、特段の事情がない限り、国家賠償法一条一項の適用上違法となる

(最三判平25・12・10)……寺崎嘉博

七七 性同一性障害で性別変更審判を受けた者の妻が婚姻中に懐胎した子と嫡出推定

(最三決平25・12・10)……棚村政行

七八 第一審で敗訴した者が控訴提起に伴う強制執行停止の担保を提供した場合に、後に一部敗訴を内容とする控訴審判決に従い損害賠償金全額を仮弁済しその後同判決が確定したときは、担保取消事由としての「担保の事由が消滅した」といえるとされた事例

(東京高決平25・7・19)……中野哲弘

七九 混合組合の法的地位と不当労働行為救済申立人適格

(東京地判平25・10・21)……三井正信

八〇 一審で裁判員の参加する合議体が強盗殺人等の事案につき死刑を選択したのに対し、控訴審が、前科を除けば死刑を選択し難い本件について、本件と前科との間に社会的な類似性は認められず、前科を重視して死刑を選択するには疑問があるなどとして、原判決を破棄して無期懲役刑を言い渡した事例

(東京高判平25・6・20)……城下裕二

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